【調査報告】「日本の非感染性疾患に関わる医療者の役割と働き方最適化に向けた調査」(2021年1月28日)
日付:2021年2月2日
タグ: NCDs
NCDアライアンス・ジャパン*/日本医療政策機構は、調査・提言「日本の非感染性疾患に関わる医療者の役割と働き方最適化に向けた調査〜Strengthening of Health Workforce on Non-Communicable Diseases and Universal Health Coverage〜」を公表いたします。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、医療供給には限界があることをこれまでになく多くの人が実感しているのではないでしょうか。しかし、世界で最も早く深刻な高齢社会を経験している日本において医療提供体制、中でも医療者の不足と地域・専門領域の偏在は、以前より喫緊の課題でした。特に非感染性疾患(NCDs:Non-Communicable Diseases)は死因の80%以上を占め、増加する高齢人口が複数のNCDsを併発する状況があり、限られた医療資源の有効な配分や全体最適化に資する議論や具体的な施策が展開されつつあります。
これを踏まえ、NCDアライアンス・ジャパンでは、NCDsに関わる医療者の役割を見つめ直し、医療者の働き方改善ややりがいの向上を通じた、NCDs患者・当事者へのさらなる医療の質向上に貢献すべく、本調査を実施しました。また、高齢先進国の日本の対応についてNCDアライアンスメンバーをはじめ、諸外国に発信する意図も込めています。
第Ⅰ章では、机上調査により、昨今の議論や施策を包括的にまとめました。
第Ⅱ章では、「医師と看護師間のタスク・シフティング、タスク・シェアリング」をテーマに、現役の医師と看護師への定性調査を実施しました。なお、政府議論の中で、タスク・シフト、シェア先として「特定行為研修を修了した看護師」が想定されていることから、特定行為研修を修了した看護師の活用に関する課題と展望に関する意見を主に収集しています。
■定性調査「タスク・シフティング、タスク・シェアリング医療者の声」結果のポイント
- 日本の医療提供体制の主たる課題である医師の多忙、医療者の不足・偏在を是正するほど、タスク・シフティング、タスク・シェアリングは広まりを見せておらず、働き方の改善には現状ほとんど至っていない。
- 一部の医師・看護師はタスク・シフティング、タスク・シェアリングの効果を感じ始めており、医療者の働き方改善のみならず、患者・当事者に迅速かつ質の高い医療を提供する手段の一つになりうることが大いに期待される。
- タスク・シフティング、タスク・シェアリングはあらゆる専門領域、地域、医療セッティングで導入すべきである。特にNCDs領域においては、急性期のみならず回復期、慢性期において、また、高齢化により今後さらに需要が高まるとされる在宅医療、介護事業所、地方・へき地医療において活躍の可能性が多分にある。
今後、タスク・シフティング、タスク・シェアリングが医療提供体制最適化の一つの有効な打ち手になると考え、さらなる推進および改善に向けたアクション例を、以下3つの視点から提示しています。詳細は調査提言書の本文をご覧ください。
■本調査結果を受けた提言:3つの視点
視点1:タスク・シフティング、タスク・シェアリングを推進するための臨床現場での具体的導入策や特定行為ができる看護師のトレーニング環境の整備の必要性
視点2:インセンティブ付けや教育制度改革による特定行為研修受講者数の拡大
視点3:タスク・シフティング、タスク・シェアリングの効果測定による有用性の見える化
今後は、本調査・提言書をベースとして、より多くのマルチステークホルダーと意見交換を重ねることで、さらに活動を深化させ、政策の変革を目指してまいります。
■本調査に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人 日本医療政策機構(担当:吉村)
*日本医療政策機構では、心疾患、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患、メンタルヘルスなどに代表される非感染性疾患(NCDs: Non-communicable Diseases)対策を推進すべく、NCDsに関連した患者・当事者を含めた産官学民のステークホルダーが集まる協働プラットフォームとしてNCDアライアンス・ジャパンを運営し、政策提言、患者・当事者支援、調査・研究を実施しています。
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