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【政策提言】「特発性正常圧水頭症(iNPH)対策の推進に向けた4つの視点」(2023年2月16日)

【政策提言】「特発性正常圧水頭症(iNPH)対策の推進に向けた4つの視点」(2023年2月16日)

日本医療政策機構 認知症政策プロジェクトではこの度、政策提言「特発性正常圧水頭症(iNPH)対策の推進に向けた4つの視点」を公表いたしました。なお、詳細については下記PDFをご覧ください。


■政策提言の背景

日本における認知症の人の数はまもなく700万人を超えるとされる現代において、高齢期においてもよりよい生活を送るためには、認知症に伴う症状の緩和や原因疾患の治療が望まれています。認知症の原因疾患の多くは根本的な治療が難しい一方で、特発性正常圧水頭症(iNPH: idiopathic normal pressure hydrocephalus)は「治療で改善できる認知症」とされ、その患者数は認知症の人の約5%程度の約37万人に上ると推計されます。また近年ではアルツハイマー病との併発も指摘されており、推計よりもさらに多くのiNPH患者が存在する可能性もあります。iNPHの適切な治療により得られる効果については、寿命延伸のみならず、高い医療経済効果や転倒防止等、数多くのメリットが提起されています。さらに2019年には厚生労働省老人保健健康増進等事業「治療可能な認知症に対する医療のあり方に関する調査研究事業」が実施され、政策アジェンダとしての位置づけも徐々に高まっています。 しかし、iNPHの治療によって認知症の症状を改善させ、1人でも多くの当事者が質の高い生活を送るためには、依然として多くの課題があります。そこで日本医療政策機構では、iNPHを認知症政策の重要なアジェンダの一つと捉え​、このような多岐にわたる課題を社会全体で解決していくべく、iNPHに関わる医療者、アカデミア、産業界の他、患者当事者の方の参画も得て、産官学民のマルチステークホルダーによる議論を基に、必要な施策を洗い出し政策提言を策定しました。​

 

■政策提言

視点1:マルチステークホルダーに向けたフェーズに応じた啓発施策の推進

  • 幅広い診療科に対するiNPHの情報提供と診療ガイドラインの普及促進の必要性
  • 介護福祉専門職はもちろん、高齢者の生活を支える民間事業者も広く啓発の対象とする必要性
  • 当事者リーダーの育成と当事者組織をはじめとした市民社会活動の活性化支援の必要性


視点
2:早期介入と質の高い診断・治療を実現する医療提供体制の構築

  • 早期発見・早期診断・早期対応を後押しする、iNPHの「気づき」から「受診」の流れの創出​の必要性
  • 地域特性にあったiNPHの診断・治療拠点の整備の必要性​
  • 病院・診療所間および、医療・介護の垣根を超えた多職種の連携を強化し、術後のフォローアップ体制をシームレス化する必要性​


視点
3:多様なニーズに応えることのできる持続可能かつ先進的な研究環境の整備

  • 資金を継続的に確保し、中長期的に日本におけるiNPH研究を成長させる必要性
  • AIの活用、学際的な共同研究や国際的なデータシェア、患者市民参画型の研究を促進する必要性


視点
4:必要な施策が確実かつ安定的に実施されるための政治的リーダーシップの発揮

  • 認知症施策推進大綱をはじめとする国家戦略への記載の必要性
  • 立法府においてもiNPHへの関心を高め、今後の政策推進へのリーダーシップを発揮する必要性

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