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【論文発表】「福島の原子力発電所員のメンタルヘルスにおいて被災体験と社会的批判が与える長期的影響」が国際学術誌に掲載

日本医療政策機構シニアアソシエイト谷所由紀子(研究当時)、フェロー窪田和巳が、防衛医科大学校精神科学講座重村淳准教授らによる研究チームと執筆した論文「福島の原子力発電所員のメンタルヘルスにおいて被災体験と社会的批判が与える長期的影響(The longitudinal mental health impact of Fukushima nuclear disaster exposures and public criticism among power plant workers: the Fukushima NEWS Project study)が、国際学術誌Psychological Medicineに掲載されました。

本論文は、東日本大震災の2~3か月後と14~15か月後、福島第一および第二原子力発電所に勤務していた968名の職員を対象とした調査です。
震災直後のさまざまなストレス要因が、その後の心理的苦悩やPTSD症状(心的外傷後ストレス反応)にどう影響するか検証しました。
主要な研究成果として、2~3か月後に心的不調が強かったり社会的批判(非難・中傷)を受けたりした方は、14~15か月後に強い心的不調をきたしていたことが分かりました。
この結果から、発災後早期からの心のケアや社会的支援が重要なことが示唆されました。

>>論文(英文)はこちら
The longitudinal mental health impact of Fukushima nuclear disaster exposures and public criticism among power plant workers: the Fukushima NEWS Project study.

■背景
福島第一・第二原子力発電所ではたらく作業員は、2011年の東日本大震災とそれに伴う原子力事故の後、被害者 と現場作業員という複数のストレスを経験した。先行研究では、非難・中傷を含む被災体験は、彼らのメンタルヘルスと密接な関係があることが明らかにされた。しかし、それらの長期にわたる影響に関しては明らかになっていない。

■研究方法
合計968人の福島原子力発電所作業員(第一:n=571、第二:n=397)を対象に、自記式質問票を用い、震災後(返答率55%)2〜3ヶ月と14〜15ヶ月の時点で、人口統計学的要因、被災体験、及びメンタルヘルスを評価した。
メンタルヘルスに関する指標として、全般的心理的苦悩(General Psychological Distress: GPD)はK6尺度を、心的外傷後ストレス反応(Post-traumatic Stress Responses: PTSR)は出来事インパクト尺度日本語版(IES-R: Impact of Event Scale-Revised)を用いた。
統計解析に関しては階層的重回帰分析を用い、各要因が全般的心理的苦悩(GPD)や心的外傷後ストレス反応(PTSR)に与える影響を検証した。

■結果
震災14〜15か月後の高い全般的心理的苦悩(GPD)は、震災2〜3か月において全般的心理的苦悩(GPD)が高かった場合(β = 0.491, p < 0.001)と震災の2〜3か月後に非難・中傷を経験した場合(β = 0.065, p = 0.025, adjusted R2 = 0.24)だと予測された。
震災14〜15か月の高い心的外傷後ストレス反応(PTSR)は、震災2〜3か月において心的外傷後ストレス反応(PTSR)が高かった場合(β = 0.548, p < 0.001)、年齢が高かった場合(β = 0.085, p = 0.005)、震災2〜3か月後において非難・中傷を経験した場合(β = 0.079, p = 0.003, adjusted R2 = 0.36)だと予測された。

■結論
震災2〜3か月後において全般的心理的苦悩(GPD)が高いこと、及び、非難・中傷を経験したことが、震災14〜15か月後も引き続き全般的心理的苦悩(GPD)が高く、震災2〜3か月後において心的外傷後ストレス反応(PTSR)が高いこと、非難・中傷を経験したこと、及び年齢が高いことが、震災14〜15か月後も引き続き、心的外傷後ストレス反応(PTSR)が高いことを示した。

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