【政策提言】AMR日米専門家会合「AMRの世界的脅威と日本が果たすべき役割」 AMRアクションプラン推進に向けた6分野・14項目の提言(2016年8月5日)
日付:2016年8月5日
タグ: AMR
2016年4月18日、米国 戦略国際問題研究所(CSIS)と日本医療政策機構は、共同で、「AMR日米専門家会合」を開催しました。
既存の抗菌薬が効かない細菌が世界規模で増加し、この薬剤耐性(AMR)に関する様々な課題を解決するために、各国や国際機関、企業などにおいて、対策や連携、新たな研究開発が求められています。
アジアAMR東京閣僚会議開催直後というモメンタムのなか、マルチステークホルダーが結集し、産学官民を巻き込んだAMR問題に関する政策議論の場となり、活発な議論を通じて具体的な提言が相次いででました。
特に、日本政府が2016年4月5日に発表した「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」の6つの分野目標とアウトカム指標について、当日米専門家会合でも議論の深化が見られました。
日本医療政策機構では、会合の要旨・まとめとして政策提言を作成し、日本政府の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」に沿い、以下6分野・14項目を取りまとめました。
また、米国 戦略国際問題研究所(CSIS)と日本医療政策機構は共同で、G7向けの政策提言を作成し、発表しました。
それぞれの政策提言全文は、本ページ右リンクをダウンロードのうえご覧ください。
AMRアクションプラン推進に向けた6分野・14項目の提言
AMRアクションプラン 分野1:普及啓発・教育
<提言1:AMRに対する医学部教育の充実>
■AMRに対する医学部教育は、臨床的知見や基礎医学的教育のみならず、社会医学、医療経済学、関連する社会科学、国際比較などを含めた、総合的な教育機会の提供がみられるべき
<提言2:AMRに対する社会的意識の進化>
■現在設置が検討されている「薬剤耐性(AMR)対策推進国民会議」(仮称)を、医療提供者、患者代表、保険者、産業界、政府、海外有識者など産学官民のマルチステークホルダーが参画する、合意形成や普及啓発を推進させる中核と位置づけ、アクションプランの実現を目指すべき
AMRアクションプラン 分野2:動向調査・監視
<提言3:菌株ベース・サーベイランスシステムの構築>■菌株ベース・サーベイランスシステムは、関連学会と国とが連携し、産学官民が協力して構築すべき
■国と関連学会で役割分担を明確化したうえで、継続性のための資金、人材などのリソースを継続的に確保できる体制を構築すべき
■サーベイランスシステムの運用、活用について、継続的に改善していくうえで、産学官民連携のサーベイランス運用委員会を設置すべき
<提言4:サーベイランスシステムの応用>
■菌株ベース・サーベイランスシステム上の耐性菌株を、産学官民が新薬開発のために活用できるよう、公開を原則とし、官民連携による研究開発を推進すべき
■サーベイランスシステム上の臨床、菌株データと、抗菌薬使用量を、ICTの活用などにより連結し、抗菌薬使用の詳細かつリアルタイムな現状把握を可能にすべき
■国内でヒトと動物のサーベイランスシステムの統合を進めることで、米国のワンヘルス・サーベイランスシステムとの連携を可能とし、国際的枠組みでワンヘルス・アプローチを推進すべき
<提言5:外来での抗菌薬使用の実態把握>
■外来で処方された抗菌薬使用量のデータを入手できるよう、調剤薬局などからもデータを収集できる仕組みを構築すべき
<提言6:サーベイランス強化へ向けたマルチステークホルダーの参画>
■「薬剤耐性感染症制御研究センター(仮)」の設置をはじめとした、サーベイランス強化に向けた施策においては、国のみならず、関連学会や産業界をはじめとした産学官民の参画を仰ぎ、連携と協力体制を構築すべき
AMRアクションプラン 分野3:感染予防・普及
<提言7:AMR対策での医療ICTの活用>
■地域・施設間のリアルタイムな情報共有を可能にする医療ICTの活用を推進すべき
AMRアクションプラン 分野4:抗微生物剤の適正使用
<提言8:抗菌薬の適正使用推進の複合的アプローチ>
■施設種別に合わせた、抗菌薬適正使用の教育介入プログラムを策定し、参加に対するインセンティブの付与を検討すべき
■使用量と売上げを切り離す薬価メカニズムも検討することで、抗菌薬の過剰使用を抑止すべき
■薬剤耐性遺伝子検査の保険適用を推進し、適正な抗菌薬の選択を促進すべき
<提言9:ワクチン戦略の推進>
■高齢者施設での抗菌薬の過剰使用を抑止すべく、免疫力などに合わせた適切な範囲で、ワクチン接種を推進すべき
■患者の年齢や免疫力などに合わせて適切な範囲で、抗菌薬とワクチンの併用を、選択すべき
<提言10:アウトカム指標の推進>
■抗菌薬の適正使用については、抗菌薬使用量の削減量だけを目標にするのではなく、治療効果及び疫学的なアウトカムを指標にした評価も導入すべき
AMRアクションプラン 分野5:研究開発・創薬
<提言11:研究開発を促進する審査制度設計>
■PK/PDモデリング・アンド・シミュレーション(MS)等を活用して、限られた症例数でも薬剤耐性菌に対する新規抗菌薬の効率的な臨床評価を可能とする体制を整備すべき
■薬剤耐性菌に対する新規抗菌薬の有効性・安全性のデータを、開発から市販後まで一貫して収集するため、医療施設間等の電子情報ネットワークを構築すべき
<提言12:多角的かつ効果的な研究開発インセンティブの創出>
■研究開発におけるインセンティブ(プル型、プッシュ型、キャップ・アンド・カラー方式など)の付与を検討すべき
■医療上必要性の高い薬は薬価における評価を検討する等、開発を促進する薬価政策を展開すべき
<提言13:創薬促進の産学官民連携コンソーシアムの設立>
■抗菌薬の研究開発、インセンティブ付与、審査制度、臨床使用について、産学官民を巻き込んだ、マルチステークホルダーでの議論を継続すべく、政府内にコンソーシアムの推進体制を構築すべき
AMRアクションプラン 分野6:国際協力
<提言14:アジア太平洋地域でのリーダーシップ>
■アジアAMR東京閣僚会議を好事例として、継続的に国際機関やアジア諸国との国際協調枠組みを推進すべき
■国際的な潮流や課題設定を活用して、国内世論の喚起を図るべき
■JANISのアジア展開のために必要なリソースを確保し、アジアのAMR対策に貢献すべき
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