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【開催報告】第65回定例朝食会「職場から考える健康・医療~健康経営の取り組み~」(2017年11月27日)

【開催報告】第65回定例朝食会「職場から考える健康・医療~健康経営の取り組み~」(2017年11月27日)

経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課の富原 早夏氏をお招きし、健康経営の推進に向けたこれまでの取り組み(健康経営銘柄、ホワイト500等の顕彰制度、健康経営アドバイザー、自治体・地銀信金等による優遇策等)についてご紹介いただくとともに、この取り組みを通じた企業や社会の変化や、現在の課題、そして今後の方向性等についてご講演いただきました。また、当日は、日本医療政策機構理事であり、健康経営度調査基準検討委員会の委員や「なでしこ銘柄」選定基準検討委員会の委員を務める渋澤 健がモデレーターを務めました。

 

 

 

冒頭で渋澤は、会の趣旨を「従業員の健康を維持するためには各企業の取組が重要であり、この活動を行うためにはコストがかかる。しかし、健康経営はコストではなく長期投資だと言える。なぜならば健康な経営者と従業員がいなければ持続的な企業の価値は創造できないからだ。この人に対する投資の見える化を図り価値創造の最大化を図ることで経済社会が豊かになると考える。そういった側面を今日は皆さんと考えていきたい。」と説明しました。

■講演の概要

超高齢社会においては、社会保障費の拡大が財政を圧迫する要因となるとともに、労働力の減少に伴う経済活動の停滞が懸念される。2017年は、現役世代2人が1人の高齢者を支えており、今後、同じように現役世代で65歳以上を支えていく場合、2050年には1.3人に1人の高齢者を支えることになる。しかし、65歳以上の方が、実像に合わせて自立した場合、2050年であっても2.3人で1人を支える社会が実現できる。経済産業省では、健康寿命の延伸をめざし、「生涯現役社会」の構築を考えている。

健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することである。会社は、従業員の健康保持・増進に向けて具体的な取組(投資)を行い、従業員の体調を整え、従業員の活力向上や生産性向上等の組織の活性化を図る。経済産業省は、過去においては、再生医療や個別化医療、先進医療の技術開発を進めてきたが、これからの社会に必要なことは健康文化の醸成であり、この健康経営を当たり前にしていくことが必要であると考え、3年前に東京証券取引所とともに「健康銘柄」の選定を始めた。この取組は、学生の企業選びにも寄与しており、企業が「ホワイト企業」である重要性が増し、各種メディアでも取り上げられている。これにより今までは従業員の健康は産業保健担当の領域であったものが、経営者を巻き込んだ企業全体での取り組みに変わったのは大きな成果だといえる。

また、健康経営は大企業だけではなく、中小企業にこそ必要だと考えている。そこで、様々な団体と連携して中小企業の取組を評価する「健康経営優良法人(ホワイト500)」を2017年2月に認定した。さらには、健康経営の投資対効果を測定するための手法の開発・研究を行っており、その一つとして、年間医療費平均、メタボ該当率等に関する追跡調査も行っている。この結果、健康経営における高スコア群が低スコア群をいずれも下回る結果が得られた。

自治体による表彰制度や、地銀、信金等民間企業による低利融資など、企業による従業員の健康増進に係る取組に対し、インセンティブを付与する自治体、銀行、機関が増加している。こうした取組の一層の拡大を図りたい。健康経営を行っている企業はヒトもカネも集まることを広めていきたい。今後は、中小企業に対して、いかに広げるかということが一つの課題である。健康経営の領域についてはメタボ対策をメインとしている企業は多いが、職種により、健康リスクは違うと考えている。今後は、働き方に合わせた健康課題への取り組みを厚生労働省と連携してやっていきたい。なかでも女性の健康問題が一番の課題だと思っている。

日本はデータが沢山あり、国民皆保険のもと質の高いデータを集められる可能性がある。診療報酬に基づいてインセンティブを付けることもできる。データの集約を図り、価値の高い医療サービスを支える事業者づくりにも取り組んでおり、現在8つのチームが活動している。事業主側と地域医療側をIoTによりつなぎ、産業医と臨床医の連携を図るということもしている。3年間、糖尿病学会と一緒に開発糖尿病重症化予防プロジェクトを行い、個別化した保健指導は糖尿病の患者さんにおいてはヘモグロビンA1cの数値の下がり方が大きいことが分かった。

2025年までに新しい健康医療介護システムの実装を検討している。なかでもロボットやセンサー、AIの利用も視野に入れた介護の現場の負担の軽減を柱にしている。このような社会を支えるツールを有効に使い、社会システムの変革を促し、高齢者の社会活動を促していきたい。

講演の後、参加者との活発な意見交換が行われました。

質疑応答の中で、富原氏は「表彰制度は付録だと思っている。1年に1回、関係部署の人たちが今の健康経営の取組を自己点検するプロセスが大事だと思っている。」と語り、健康経営に関する話題を社会の中に浸透させていきたいと述べました。


■富原 早夏 氏(経済産業省 商務・サービスグループヘルスケア産業課 総括補佐)
2006年経済産業省入省。外国人材政策、産業再生、再生可能エネルギー、アジアとの経済協力・経済連携交渉等の政策を担当した後、2015年から現職。東京大学大学院薬学系研究科(MPharm)、米国ノースウェスタン大学ケロッグ校卒(MBA)。

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