【開催報告】第67回定例朝食会「2018年の新たなビジョン」(2018年1月11日)
日付:2018年2月1日
タグ: HGPIセミナー
今回の朝食会は、毎年恒例となっている当機構代表理事 黒川 清による「New Vision of 2018」として以下をテーマに、さまざまなトピックについて会場の皆さまと議論しました。
※当日配布した、黒川による「世界のエリートが読んでいる本」のリストは、下記よりダウンロードください。
■日本の研究者教育の実態
日本の論文数は10年前にはアメリカに次いで2位だったが、この10年で激減した。論文の引用数も世界的に見て減少している。この原因はどこにあるのか。日本は産業のみならず、教育においても縦割社会であり、能力だけでなく人間関係でポジションが決まる社会である。2017年は「忖度」という言葉が流行したが、日本社会には長年において培われてきた忖度文化があり、急に出てきた言葉ではないことが、一番の問題だろう。世界では、PhDは独立した研究者としてのスタートラインであるが、日本においては、PhD取得後でも教授の研究をサポートする立場にいることが多い。だから研究者が育たない。本来PhDを取得した研究者は、独立した個人として、次世代を切り開く役割を担うべきである。
また、日本のサイエンスの凋落の原因は科学技術研究予算が他国に比べて少ないからだという人がいる。しかし、研究者1人当たりの公的研究費を見ると、イギリスは日本より少ない。確かにアメリカの研究費は多いが、Principal investigator(PI;「研究代表者」または「研究責任者」)等研究者の賃金も含まれているため、日本でいう「研究費」の解釈が異なることに注意が必要である。この事実が指す意味は何か。教育者は、この現実をよく考えて「次の世代を育てる教育」について考えていく必要がある。
■次世代を変える教育とは
日本では文系と理系が初めから分かれて入学するが、実はケンブリッジ大学や、オックスフォード大学などの世界のトップ大学には、そもそもこの概念がない。さらに、学生への教育体制の手厚さも異なる。例えばケンブリッジ大学のチュータリング制度では、2人の学生に1人のチューターがつき、毎週、課題本が指定され、エッセイを書いたり、プレゼンをしたり、時には議論をしたりする。一方で日本の場合はそのような議論がなされていない。
■なぜチャレンジが必要なのか
今後、テクノロジーが進むと、2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)の世界になると言われている。シンギュラリティとは、テクノロジーが人間の脳の機能を凌駕するであろうといわれているポイントである。いずれ技術は人を超える。だからこそ人は人にしかできないことにチャレンジしていかなければいけない。
若いうちは失敗しながらでも、少しずつ進むことが重要だ。2歩出ていれば、失敗して1歩下がったとしても、少なくとも1歩は前進しているのだ。失敗したことを繰り返さなければいい。そうして経験を積み上げていけばよい。実体験は成功を生む。
また、若いうちに海外に行き世界を見ることも重要だ。技術が中心の社会を変えるためには、既成概念にとらわれないチャレンジをどんどんしていくべきである。
調査・提言ランキング
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【政策提言】腎疾患対策推進プロジェクト2024「労働世代における慢性腎臓病(CKD)対策の強化にむけて」~健診スクリーニング、医療機関受診による早期発見、早期介入の重要性~(2024年10月28日)
- 【調査報告】日本の看護職者を対象とした気候変動と健康に関する調査(最終報告)(2024年11月14日)
- 【政策提言】保健医療分野における気候変動国家戦略(2024年6月26日)
- 【政策提言】肥満症対策推進プロジェクト2023「患者・市民・地域が参画し、協働する肥満症対策の実装を目指して」(2024年4月8日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【調査報告】「2023年 日本の医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査」(2024年1月11日)
- 【調査報告】「子どもを対象としたメンタルヘルス教育プログラムの構築と効果検証」報告書(2022年6月16日)
- 【調査報告】日本の看護職者を対象とした気候変動と健康に関する調査(速報版)(2024年9月11日)
- 【調査報告】 日本の医師を対象とした気候変動と健康に関する調査(2023年12月3日)
注目の投稿
-
2024-10-28
【申込受付中】(ハイブリッド開催)公開シンポジウム「患者・当事者ニーズに基づく循環器病対策の推進に向けて~第2期循環器病対策推進計画をより実行性のあるものにしていくために~」(2024年11月22日)
-
2024-11-01
【申込受付中】認知症未来共創ハブ 報告会2024 〜活動の軌跡と未来を描く対話〜(2024年12月3日)
-
2024-11-08
【申込受付中】(ハイブリッド開催)肥満症対策推進プロジェクト 公開シンポジウム「社会課題として考える肥満症対策~市民主体の政策実現に向けて~」(2024年12月4日)
-
2024-11-11
【論点整理】専門家会合「少子化時代における持続可能な周産期医療提供体制の確立に向けて」(2024年11月11日)
-
2024-11-14
【調査報告】日本の看護職者を対象とした気候変動と健康に関する調査(最終報告)(2024年11月14日)