「細胞再生医療シンポジウム 臨床応用への道筋」
日付:2005年8月18日
最先端医療分野の中でも特に注目を集めている再生医療。日本医療政策機構では、最先端医療分野における政策課題として、再生医療の臨床応用の課題について議論を行った。
開会の辞で、黒川 清は、「科学技術の発展の裏には常に社会的背景が存在する。社会に受け入れられるフレームを、「タテ」の関係ではなく、このシンポジウムのような「ヨコ」のフラットな場で議論し、政策の選択肢を国民に提示することが重要である」と、本会議の趣旨を述べた。そうした、フラットな場を実現すべく、本シンポジウムは、実務家、研究者、審査官、行政官、医療ジャーナリスト、医療者など、再生医療に関わる様々なステークホルダーが結集する形で設計された。
まず、米国における再生医療の実態について報告があり、その後、それを支える米国プロセスについての紹介があった。
次に、日本の実務家からの問題提起が行われ、日本の審査プロセスなどの制度課題が討議された。その後、西川 伸一氏と宮田 満氏による、会場全体とのオープンディスカッションが展開された。自由に発言できる環境の中で、真の課題について活発な意見交換が行われた。
最後に、尾身 幸次氏が閉会の辞を述べ、立法府としての役割について述べた。
■スピーカーの発言要旨
黒川 清: 「 科学技術の発展の社会的背景」
科学技術のフロンティアを切り開くのは科学者達だが、その実用化には社会的な背景による要請や裏づけが必要である。アポロ計画が、コンピューターの発展を促し、ヒトゲノムの解読に繋がった。再生医療の発展に向けては、様々な課題があるため、社会に受け入れられるためのフレームを「タテ」の関係ではなくフラットな場で議論し、政策の選択肢を提示することが必要である。
Mark H. Hedrick氏: 「 各種幹細胞の違いやコスト面を視野に」
幹細胞は種類によって分化の可能性や安全性に大きな違いがある。各種幹細胞の採取方法及び細胞を培養するか否かでコストが劇的に削減できる為、医療コストを下げる為の技術とビジネスモデルが臨床応用実現の鍵となる。
稲見 雅晴氏: 「 審査承認プロセスの明確化が必要」
再生医療材料の事業化に際しては、検査方法や目標数値等の明確な指針が示されていないことが、ベンチャー企業にとっては大きな負担となっている。承認審査を円滑に行うためのルールの明確化と申請手順の簡素化、及びそれに対応する機構の強化が必要である。
川上 浩司氏: 「 クリアな審査プロセスと審査体制の充実を」
米国では、生物製剤に対応した明確な審査プロセスが存在し、要求される安全性のレベルや管理の方法も整備されている。日本の審査プロセスは米国と比較して合理的でない部分が多く、総合機構の体制も圧倒的に不足している。大幅な人員増強と権限の強化が必要だ。
大野 邦夫氏: 「 出口(事業化)を見据えた政策を」
再生医療分野では、基礎研究(入り口)には国からもかなり予算が投入されているが、実用化の部分(出口)での市場形成に問題がある。出口での必要性を研究・開発にうまくフィードバックする仕組みを取り込んだ制度設計が必要である。
中畑 龍俊氏: 「 先端医療を行う施設の集中化が必要」
日本には造血幹細胞移植をする施設が約300 もある。300 の施設で年間2 〜3 例の慣れない移植を行っているため、その分医療費もかさんでいる。先端医療は集中化していくということが必要である。
西川 伸一氏: 「 企業が細胞にアクセスできる仕組みが必要」
細胞の調達は企業にとって大きな課題であり、バンクの整備が必要だ。ドナーには、企業が使用することには抵抗があるという方が多い。ドナーと企業が話し合う場を作るなど、企業が細胞にアクセスできるような仕組みが必要だ。
位田 隆一氏: 「 民主的プロセスで、結論を出すという意思」
プロセスの透明性と民主的コントロールが必要。医師や科学者のみで又は政府が一方的に決めて動かすことは問題。社会の様々な意見を組み入れること、きちんと議論し、必ず決定し制度を作り、それを適切に動かすという強固な意思が必要。
川原 章氏: 「 生物由来製品の安全性には慎重な対応が必要」
生物由来製品については、過去に血液製剤や脳硬膜で疾患を持った患者さんの材料が混入し、深刻な問題を引き起こしたこともあり、材料の安全性のチェックが必要だ。一方で国民医療の必要性の観点からは、審査の柔軟性を高めることも重要だ。
重藤 和弘氏: 「 多様な関係者が参加したルール作りが必要」
細胞再生医療の規制は、医行為として扱うか、創薬として扱うかに議論の余地がある。創薬の中でも、医師主導の治験など、様々なあり方が検討しうる。再生医療は新しい医療分野なので、関係者が知恵を出し合ってルールを作ることが望ましい。
宮田 満氏: 「 全体最適の議論が必要」
部分最適ではなく全体最適を目指す議論をしなければならない。国民皆保険を前提にした議論が果たして次の10年の議論なのかということも含めて検討する必要がある。また、審査体制の増強を目指すのであれば、我々国民の負担を前提にしてやるのか、製薬企業の負担を前提にやるのか、それとも第3 の道を作るのかというのが、おそらく議論の出発点となる。
尾身 幸次氏: 「 治験及び臨床実験のスピードを速めるための制度整備を」
再生医療分野における日本の基礎研究は海外からも高い評価を得ているが、臨床実験と治験の段階になると、アメリカのほうが手続きが簡素で、設備や人員の面でもはるかに充実している。治験等にあまりにも時間がかかりすぎる現状はやはり問題であり、科学技術政策の面からも放置できない。治験等推進のための特別立法制定なども含めて、対策を検討する必要がある。
開会の辞で、黒川 清は、「科学技術の発展の裏には常に社会的背景が存在する。社会に受け入れられるフレームを、「タテ」の関係ではなく、このシンポジウムのような「ヨコ」のフラットな場で議論し、政策の選択肢を国民に提示することが重要である」と、本会議の趣旨を述べた。そうした、フラットな場を実現すべく、本シンポジウムは、実務家、研究者、審査官、行政官、医療ジャーナリスト、医療者など、再生医療に関わる様々なステークホルダーが結集する形で設計された。
まず、米国における再生医療の実態について報告があり、その後、それを支える米国プロセスについての紹介があった。
次に、日本の実務家からの問題提起が行われ、日本の審査プロセスなどの制度課題が討議された。その後、西川 伸一氏と宮田 満氏による、会場全体とのオープンディスカッションが展開された。自由に発言できる環境の中で、真の課題について活発な意見交換が行われた。
最後に、尾身 幸次氏が閉会の辞を述べ、立法府としての役割について述べた。
■スピーカーの発言要旨
黒川 清: 「 科学技術の発展の社会的背景」
科学技術のフロンティアを切り開くのは科学者達だが、その実用化には社会的な背景による要請や裏づけが必要である。アポロ計画が、コンピューターの発展を促し、ヒトゲノムの解読に繋がった。再生医療の発展に向けては、様々な課題があるため、社会に受け入れられるためのフレームを「タテ」の関係ではなくフラットな場で議論し、政策の選択肢を提示することが必要である。
Mark H. Hedrick氏: 「 各種幹細胞の違いやコスト面を視野に」
幹細胞は種類によって分化の可能性や安全性に大きな違いがある。各種幹細胞の採取方法及び細胞を培養するか否かでコストが劇的に削減できる為、医療コストを下げる為の技術とビジネスモデルが臨床応用実現の鍵となる。
稲見 雅晴氏: 「 審査承認プロセスの明確化が必要」
再生医療材料の事業化に際しては、検査方法や目標数値等の明確な指針が示されていないことが、ベンチャー企業にとっては大きな負担となっている。承認審査を円滑に行うためのルールの明確化と申請手順の簡素化、及びそれに対応する機構の強化が必要である。
川上 浩司氏: 「 クリアな審査プロセスと審査体制の充実を」
米国では、生物製剤に対応した明確な審査プロセスが存在し、要求される安全性のレベルや管理の方法も整備されている。日本の審査プロセスは米国と比較して合理的でない部分が多く、総合機構の体制も圧倒的に不足している。大幅な人員増強と権限の強化が必要だ。
大野 邦夫氏: 「 出口(事業化)を見据えた政策を」
再生医療分野では、基礎研究(入り口)には国からもかなり予算が投入されているが、実用化の部分(出口)での市場形成に問題がある。出口での必要性を研究・開発にうまくフィードバックする仕組みを取り込んだ制度設計が必要である。
中畑 龍俊氏: 「 先端医療を行う施設の集中化が必要」
日本には造血幹細胞移植をする施設が約300 もある。300 の施設で年間2 〜3 例の慣れない移植を行っているため、その分医療費もかさんでいる。先端医療は集中化していくということが必要である。
西川 伸一氏: 「 企業が細胞にアクセスできる仕組みが必要」
細胞の調達は企業にとって大きな課題であり、バンクの整備が必要だ。ドナーには、企業が使用することには抵抗があるという方が多い。ドナーと企業が話し合う場を作るなど、企業が細胞にアクセスできるような仕組みが必要だ。
位田 隆一氏: 「 民主的プロセスで、結論を出すという意思」
プロセスの透明性と民主的コントロールが必要。医師や科学者のみで又は政府が一方的に決めて動かすことは問題。社会の様々な意見を組み入れること、きちんと議論し、必ず決定し制度を作り、それを適切に動かすという強固な意思が必要。
川原 章氏: 「 生物由来製品の安全性には慎重な対応が必要」
生物由来製品については、過去に血液製剤や脳硬膜で疾患を持った患者さんの材料が混入し、深刻な問題を引き起こしたこともあり、材料の安全性のチェックが必要だ。一方で国民医療の必要性の観点からは、審査の柔軟性を高めることも重要だ。
重藤 和弘氏: 「 多様な関係者が参加したルール作りが必要」
細胞再生医療の規制は、医行為として扱うか、創薬として扱うかに議論の余地がある。創薬の中でも、医師主導の治験など、様々なあり方が検討しうる。再生医療は新しい医療分野なので、関係者が知恵を出し合ってルールを作ることが望ましい。
宮田 満氏: 「 全体最適の議論が必要」
部分最適ではなく全体最適を目指す議論をしなければならない。国民皆保険を前提にした議論が果たして次の10年の議論なのかということも含めて検討する必要がある。また、審査体制の増強を目指すのであれば、我々国民の負担を前提にしてやるのか、製薬企業の負担を前提にやるのか、それとも第3 の道を作るのかというのが、おそらく議論の出発点となる。
尾身 幸次氏: 「 治験及び臨床実験のスピードを速めるための制度整備を」
再生医療分野における日本の基礎研究は海外からも高い評価を得ているが、臨床実験と治験の段階になると、アメリカのほうが手続きが簡素で、設備や人員の面でもはるかに充実している。治験等にあまりにも時間がかかりすぎる現状はやはり問題であり、科学技術政策の面からも放置できない。治験等推進のための特別立法制定なども含めて、対策を検討する必要がある。
申込締切日:2005-08-17
開催日:2005-08-18
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