【提言】フェローによる政策提言プラットフォームプロジェクト「日本の国際保健政策と国内プロセス」報告書(2025年1月31日)
日付:2025年1月31日
タグ: グローバルヘルス, グローバルヘルス戦略

日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)の村上博美アカデミックフェローは、2025年1月に、報告書「日本の国際保健政策と国内プロセス」を公表しました。
当機構では、2022年度より当機構に所属するフェローをはじめとした関係者が、個別に政策提言を発表し推進できる「フェローによる政策提言プラットフォーム」プロジェクトに取り組んでおります。フェローらが喫緊の課題とする政策提言の内容を、当機構内でも精査し承認し、当機構が発行する政策提言の一環とすることで、政策に関心を持つ市民に選択肢を提示し、創造性に富み実現可能な解決策を示しています。
本報告書は、2013年に当機構が発表した「日本の国際保健政策:課題と挑戦」に基づき、コロナ禍を経た日本と国際社会の変化を踏まえて再構成・加筆されたものです。国際保健に関する我が国の支援方針や政策決定プロセスに焦点を当て、今後の戦略的な方向性について提言を行っています。
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、日本の国際保健への関与のあり方が問われている中、国内の制度的な課題や政策の非効率性、そしてグローバルな保健分野における戦略的立ち位置があらためて注目されています。報告書では、日本の国際保健政策の歴史、関係省庁の役割と連携、NGOや企業との官民連携、ODA配分の実態と課題、国際的アジェンダとの整合性など、幅広く分析を行っています。
提言のポイント
- 日本の国際保健戦略の明確化と一元的推進体制の強化
国際保健を外交戦略の一部と明確に位置付け、各省庁横断の協調体制を再構築する必要性を指摘
- グローバルアーキテクチャーへの能動的参画
G7や国連、ACT-Aなどの枠組みにおけるプレゼンスを強化し、UHCやAMR、PPRといった主要課題への積極的貢献を提言
- NGO・市民社会・民間企業との連携強化
日本における寄付文化やアドボカシー能力の弱さを克服し、多様なアクターとの協働による政策形成と実行の枠組みを拡充
- ODA配分の戦略性と透明性の向上
保健分野ODAの長期的計画性と予測可能性を高め、評価とフィードバックが政策決定に反映される仕組みづくりの必要性
- UHCナレッジハブの国内設置による知見の国際共有
日本の経験を活かした国際的知識拠点としての役割を明確にし、人的資源育成と制度輸出への期待
本報告書は、国際保健分野における日本の立ち位置と課題、そして進むべき方向を改めて問い直すものです。関係者の皆様とともに、今後の議論の深化と政策の進展に寄与する一助となることを願っています。
なお、本提言書は、当機構のアカデミックフェローによる独立した調査・報告書となっており、当機構や所属する団体の見解を示すものでは一切ありません。
詳細は以下PDFよりご覧いただけます。
【プロフィール】
村上 博美(日本医療政策機構 アカデミックフェロー)
政策研究大学院大学客員研究員。国際関係論、公共政策、国際保健が専門であり、米国戦略国際問題研究所(CSIS: Center for Strategic and International Studies)グローバルヘルスポリシーセンターや米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS: Paul H. Nitze School of Advanced International Studies)、政策研究大学院大学(GRIPS: National Graduate Institute for Policy Studies)、日本医療政策機構などで科学技術や国際保健政策プロジェクト等を主導。SAISやGRIPSでは国際関係論の授業も担当。現在はGRIPS Global Health Innovation Policy CenterにてJapan’s Challengeプログラムを主導。株式会社Guardian取締役COO。米国際経営学修士、米国ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院(SAIS)国際関係論博士。著書に『Resilience and Autonomy in Prewar and Wartime Japan』(2023年)。本報告書では構成・執筆・関係者ヒアリングの全体を主導した。
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