活動報告 調査・提言

【調査報告】メンタルヘルス領域における政策課題特定に向けたウェブアンケート調査 ―「メンタルヘルス2020 明日への提言」を振り返る―(2021年2月26日)

【調査報告】メンタルヘルス領域における政策課題特定に向けたウェブアンケート調査 ―「メンタルヘルス2020 明日への提言」を振り返る―(2021年2月26日)

日本医療政策機構では、国内のメンタルヘルス分野の優先政策課題を特定するアンケート調査を実施しました。

 

【調査の背景および目的】
現代社会において、メンタルヘルス政策は重要な政策課題としての位置づけが年々高まっています。日本においても精神疾患を持つ人の数は増加傾向にあり、2017年には419.3万人[1][2]と報告されています。精神疾患やメンタルヘルスの不調の原因は多岐に渡り、人生の転機、家庭や職場環境などの要因[3]に加え、災害やパンデミックなどに伴う社会不安、経済状況の悪化に伴う雇用や資金面の不安など、社会・経済的要因も大きく、医療政策領域に留まらない領域横断的な政策課題として、幅広い視点で解決に取り組むことが求められます。

日本医療政策機構(HGPI)では、上記のような課題意識から、2019年よりメンタルヘルス政策プロジェクトを推進してきました。本人・家族や関係団体から構成されるアドバイザリーボードメンバーとの議論や国内外の有識者へのヒアリングを通じ、日本のメンタルヘルス政策における課題や論点を明らかにしました。また2019年12月には、国内外の有識者を交えたグローバル専門家会合を開催し、メンタルヘルス政策の国際潮流、および日本で考えられる打ち手について検討し、それらを取りまとめたうえで国内外のマルチステークホルダーに対して発信しました。さらに2020年7月には、これまでの活動を通じて現在のメンタルヘルス政策における課題と目指すべき政策ビジョンと打ち手の方向性を取りまとめた政策提言「メンタルヘルス2020 明日への提言~メンタルヘルス政策を考える5つの視点~」を発表しました。

 

本調査は、専門家によるディスカッションや個別のヒアリングを中心に作成した提言の内容と、市民社会におけるメンタルヘルス政策の課題認識との整合性を確認し、さらに提言には含まれない課題を発見すること、優先課題を定量的に評価することを目指し、より多くのステークホルダーを対象にウェブアンケート形式にて実施しました。

 

【調査方法の概要】
Part1、Part2の2部構成とし、当該分野の優先課題を調査しました。調査フローは以下の通りです。

※調査結果、方法の詳細は、当ページ下部の調査報告書(PDF)を参照ください。

 

【主な調査結果】

有効回答数
■Part1調査:455
■Part2調査:170

Part2調査の主な結果:各分野における優先課題(回答全体の選択率上位2位まで)

課題分野

優先課題

回答全体の選択率

リテラシー・教育

自己肯定感、レジリエンスやセルフケア教育の拡充

26%

偏見、差別、無関心、又は多様性に対する理解の醸成

22%

医療提供体制

(入院)

入院中心の医療提供体制/諸外国と比べて多い病床数と長い入院日数の改善

29%

身体合併症患者の受入れ体制の構築/精神科医の身体疾患・感染症対策への理解

18%

医療提供体制

(外来・その他)

認知行動療法など非薬物療法の普及に向けたインセンティブ設計

28%

児童・青年期の患者を医療・生活面から支援するための制度構築

20%

医療提供体制

(全般)

医師以外の専門職の活用及び多職種連携の推進

28%

保健・福祉関係機関との連携による家族支援の実施

25%

地域生活基盤

メンタルヘルス課題を抱える本人の家族への支援

18%

家庭でも職場でもない社会的居場所や交流機会の確保

16%

研究・データ

心理社会的介入研究の推進

29%

政策決定・政策評価のためのデータ蓄積

25%

マルチステークホルダーの参画・政策議論の環境・法制度

地域ごとの施策推進に向けた多様なステークホルダーによる議論の場の確保

24%

専門家や認知症サポーターのような地域で活動できる人材の確保

21%

※調査全体の詳細は当ページ下部の調査報告書(PDF)をご覧ください。

 

[1] 厚生労働省 (2017) 「平成 29 年(2017)患者調査の概況」『厚生労働省ホームページ』 2021年1月26日アクセス
[2] 株式会社日本能率協会総合研究所 (2020) 『精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築のための手引き(2019 年度版)』 2021年1月26日アクセス
[3] 英国王立精神科医学会「日本語版こころの健康ガイド 」『英国王立精神科医学会ホームページ』 2021年1月26日アクセス

 


■日本医療政策機構とは
2004 年に設立された非営利、独立、超党派の民間の医療政策シンクタンク。市民主体の医療政策を実現すべく、中立的なシンクタンクとして、幅広いステークホルダーを結集し、社会に政策の選択肢を提供しています。特定の政党、団体の立場にとらわれず、独立性を堅持し、フェアで健やかな社会を実現するために、将来を見据えた幅広い観点から、新しいアイデアや価値観を提供しています。日本国内だけでなく、世界に向けても有効な医療政策の選択肢を提示し、地球規模の健康・医療課題を解決すべく、活動しています。

■政策提言
「メンタルヘルス2020 明日への提言~メンタルヘルス政策を考える5つの視点~」はこちら

 

本件に関するお問い合わせ先:
特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI)
シニアアソシエイト 柴田 倫人
Tel: 03-4243-7156(代表) Fax: 03-4243-7378
Email: info@hgpi.org

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