【調査報告】「一般市民が『薬剤耐性(AMR)の脅威』を理解する上で重要なメッセージを特定する調査」(2022年8月25日)
日本医療政策機構は2016年から薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)の課題を取り上げ、AMRアライアンス・ジャパンの事務局も務めています。このたび、AMR対策のさらなる推進に向けて、AMRアライアンス・ジャパンが事務局をつとめる「日経・FT感染症会議 アジア・アフリカ医療イノベーションコンソーシアム(AMIC)AMR部会」では、「一般市民が『薬剤耐性(AMR)の脅威』を理解する上で重要なメッセージを特定する調査」の結果、および情報発信に向けた提案を公表いたしました。
調査では、AMRに関する今後の啓発・学修支援活動に役立てることを目的として、AMRに関するメッセージを伝達するうえでの対象と方法およびその特性について分析を実施しました。
本調査は2021年12月2日から6日にかけて、無作為抽出された18歳以上の市民1,000人を対象とした、WEBアンケートによる定量的な調査として実施されました。より具体的には、15のAMRに関連するメッセージおよび7つの抗菌薬の知識に関する設問などを設定し、市民のAMRに対する意識を調査しました。その結果から、AMRに関する情報発信の要諦を明らかにし、提案としてまとめました。
調査結果のポイント(概要)
- メッセージの発信を通じて、元来関心が無い層の認識を向上させることができる
- 若年者はデータに反応し、高齢者は自身への影響に注目する
- 全世代を通して重要視されるメッセージは1.世界的な死者数、2.治療薬の枯渇、3.高齢者への影響である
- 医療情報を発信すべき媒体(情報源)については、医療従事者による説明が重要
- 環境におけるAMRへの関心は年齢が上がるにつれて高まる
- 動物・食についてのAMR情報が重要だと感じる人は環境におけるAMRへの関心が高い
薬剤耐性菌に関する情報発信にむけた提案
今回の調査結果を受けて、以下のような事項を提案しています。本提案を踏まえて、11月の薬剤耐性(AMR)対策推進月間および2023年G7広島サミットに向けて、すべての関係者が啓発・学習支援活動に取り組むことが期待されます。
- 世代間の関心の違いを考慮したメッセージ活動の必要性
- 本調査の結果、情報発信によってAMRに対する関心のない層に対してもメッセージ活動が有効であることが示唆され、これまでのメッセージ活動に加えて、今後より一層のメッセージ活動によってより多くの市民の理解を得ていくことが必要と思われた
- 若年層は、AMRに対する問題意識を持ちにくいことからAMRへの関心が低いと考えられるため、SNSなど若者にリーチする媒体では客観的データを用いることが有効ではないか
- 高齢者への情報提供においてはどのように自身の健康に影響を及ぼすのか、ということに特化した危機意識を喚起するための情報提供が必要ではないか
- 医療者への信頼とAMR教育の必要性
- チャネル調査(参考にしている情報源)においては医療従事者からの情報への信頼性が高いことが明らかになったことから、医師だけでなく薬剤師をはじめとしたコメディカルが、AMRに関して積極的に情報提供をしていくことが必要ではないか
- 医療従事者へのAMR教育を強化・実行することで医療従事者から患者・市民への情報提供という形で正しい情報を提供するシステムとすることが有効ではないか
- One Healthの認識の必要性
- 環境に関するAMR情報は年齢が上がるにつれて関心が高まっており、若年層の関心が高い環境問題とは様相が異なる。このことから環境に関するAMR問題は環境問題ではなく健康問題として捉えられていること、またこれまで経験した公害や薬害事件といった経験も影響している可能性もあるのではないだろうか
- 動物・食に関するAMR情報は、環境に関するAMR情報とセットで発信することでワンヘルスに関して全ての関心を向上することができるのではないか
- 動物・環境・食に関するAMR情報はエビデンスが不足しているため、関心を高めるだけでなく、ヒトの健康への影響も未解明の部分が多いことも同時に伝え、適切なリスクコミュニケーションを行うことが大切ではないか
詳しくは、当ページのPDFファイル をご覧ください。
English
調査・提言ランキング
- 【調査報告】医療DXプロジェクト 当事者ヒアリング調査報告「医療のDX時代を迎え生きる当事者たち」(2024年6月10日)
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【政策提言】保健医療分野における気候変動国家戦略(2024年6月26日)
- 【お知らせ】「2024年度(令和6年度)診療報酬改定におけるがん遺伝子パネル検査の取り扱いに関する緊急共同声明」に賛同(2024年6月19日)
- 【政策提言】骨太の方針2024策定に対する提言 薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて(2024年6月11日)
- 【出版報告】医療政策の形成過程における患者・市民参画(PPI)の手引き―患者・市民と行政それぞれに求められる取り組みとその好事例(2024年3月31日)
- 【お知らせ】グリーン保健医療システムの構築に向けた転換点(2024年6月5日)
- 【政策提言】腎疾患対策推進プロジェクト 2023「患者・市民・地域が参画し、協働する腎疾患対策に向けて」政策提言・地方自治体における慢性腎臓病(CKD)対策好事例集(2024年2月14日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【調査報告】「2023年 日本の医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査」(2024年1月11日)
注目の投稿
-
2024-06-21
【開催報告】HGPIセミナー特別編「20周年を迎える日本医療政策機構:過去から未来へ、組織の歩みを振り返る」(2024年1月16日)
-
2024-06-25
【パブリックコメント提出】世界保健機関による非感染性疾患とメンタルヘルス対策に関する意見公募(2024年6月25日)
-
2024-06-26
【開催報告】グローバル専門家会合「途上国におけるがんケアのイノベーション~City Cancer Challengeの取り組み」(2024年6月20日)
-
2024-06-26
【申込受付中】(オンライン開催)第127回HGPIセミナー「政策を通じて人々の健康を守り、保健医療の仕組みを築く上での課題と展望」(2024年7月18日)
-
2024-07-01
【申込受付中】患者当事者プロジェクト オンライン専門家会合「患者・当事者・市民と作る、これからの医療政策」(2024年7月26日)