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【開催報告・政策提言】HGPIセミナー特別編 フェローによる政策提言プラットフォームプロジェクト「価値に基づく医療システムの構築に向けて」(2022年4月27日)

【開催報告・政策提言】HGPIセミナー特別編 フェローによる政策提言プラットフォームプロジェクト「価値に基づく医療システムの構築に向けて」(2022年4月27日)

日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)は、2022年4月22日に、提言「価値に基づく医療システムの構築に向けて~価値に基づく薬価制度に関する分析~」を公表しました。

当機構では、2022年度より当機構に所属するフェローをはじめとした関係者が、個別に政策提言を発表し推進できる「フェローによる政策提言プラットフォーム」プロジェクトを始動しています。フェローらが喫緊の課題とする政策提言を、当機構内で精査し承認し、賛同のうえ、当機構が発出する政策提言の一環とすることで、政策に関心を持つ市民に選択肢を提示し、創造性に富み実現可能な解決策を示してまいります。

プロジェクトの第1弾として、昨今国際的にも議論が興隆している「価値に基づく医療システムの構築に向けて」をテーマとし、当機構フェローである五十嵐中が提言を行いました。

提言の公表に合わせて4月27日に開催されたHGPIセミナー特別編では、五十嵐氏が提言「価値に基づく医療システムの構築に向けて」の内容について解説し、参加者の質問やコメントにも随時回答するインタラクティブな形で、活発な議論がされました。本提言では、少子高齢化、医療の高度化による医療費の増大に向けた対策は喫緊の課題であるとし、多面的な価値の反映を行うための具体的な量的・質的評価手法として、革新的医薬品を評価するための薬価制度、Value-based pricing(VBP)を提案しています。


<提言のポイント>

1 保健医療システムの持続可能性

  • 少子高齢化、医療の高度化による医療費の増大に向けた対策は喫緊の課題
  • 医療サービスの効果は、「雇用誘発効果・生産波及効果」と「患者が得られる効果」の2つに区分され、後者では生産性損失や介護費用など幅広い観点のコストに影響する。医療の価値を再定義する必要がある
  • 保険システム持続のため、薬価制度改定(薬価の引き下げ)に焦点が当てられていたが、薬剤が医療費に占める割合は約20%であり、この方法のみで医療費削減、医療全体の効率化は困難
  • 現行の価格調整システムは、医薬品が広く使用されるようになった際、価格が大幅に引き下げられる設計となっており、日本における国際的な薬剤のイノベーションの阻害につながりうる

2 価値に基づく薬価の方法論

  • 多面的な価値の反映を行うための具体的な量的・質的評価手法として、VBPを提言する
  • VBPは、「安全性や有効性、さらには経済性など、多面的な要素を価格に反映させる」もの
  • 定量化が難しいアンメットニーズの大きさや疾患の重症度・希少性などの要素についても、意思決定の基準を可変化することなどで疑似的な定量化をすることができる

3 具体的な薬剤の価値評価

  • 現行の薬価価格と現時点で入手可能なデータをもとにした「定量化が可能な範囲に絞った積み上げ価格」を比較すると、対象薬剤により価格の大小関係が大きく異なった
  • 短期間の治療で著効を示す領域では、積み上げ価格が現行価格を大きく上回るが、重篤な疾患で延命効果も小さい領域では、現行価格よりも著しく低い積み上げ価格となった
  • 抗がん剤のような薬剤はアンメットメディカルニーズが高いものの、薬剤の価値が価格に反映されず、定量的な価値積み上げだけでは、アクセス制限につながるリスクがある
  • 直接定量化できない定性的な価値も最終的に薬価に反映させるシステムとして、定量的・定性的価値の両方を評価するVBPが有用である

 

詳細については、下記PDFをご覧ください。


(オンライン開催)HGPIセミナー特別編「価値に基づく医療システムの構築に向けて」

【開催概要】

■ 日時: 2022年4月27日(水)16:30-18:00
■ 形式: Zoomウェビナー
■ 主催: 日本医療政策機構(HGPI)
■ 登壇者:五十嵐 中 (日本医療政策機構 フェロー/公立大学法人横浜市立大学医学群(健康社会医学ユニット)准教授/東京大学大学院薬学系研究科 医薬政策学 客員准教授)
■ 言語: 日本語
■ 参加費:無料


【プロフィール】

五十嵐 中(日本医療政策機構 フェロー/公立大学法人横浜市立大学医学群(健康社会医学ユニット)准教授/東京大学大学院薬学系研究科 医薬政策学 客員准教授)
2002年東京大学薬学部薬学科卒業。2008年東京大学大学院薬学系研究科博士後期課程修了。 2008年から同大学院特任助教、特任准教授を経て、2019年から現職。専門は薬剤経済学、医療経済ガイドラインの作成・個別の医療技術の費用対効果評価・QOL評価指標の構築など、多方面から意思決定の助けとなるデータの構築を続けてきた。著書に、「薬剤経済わかりません (東京図書、2014)」「わかってきたかも!? 医療統計 だけど論文読めません」 (東京図書、2016)「ちゃんとした薬剤経済学 : 正しい「医療とお金」とは?」(京都廣川書店、2018)「新医療経済学 医療の費用と効果を考える」(日本評論社、2019)がある。

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