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【開催報告】HGPIセミナー特別編「COVID-19下における、認知症を取り巻く『いま』を考える」(2020年5月29日)

【開催報告】HGPIセミナー特別編「COVID-19下における、認知症を取り巻く『いま』を考える」(2020年5月29日)

※本セミナーは、世界に日本の現状を発信すると共に、議論喚起のきっかけとなることを目指し、セミナー全編の動画を字幕付き(日本語版)で公開いたしました。(2020年7月11日)

※英語字幕版動画の公開は、今しばらくお待ちください。

日本医療政策機構では、HGPIセミナー特別編「COVID-19下における、認知症を取り巻く『いま』を考える」を開催いたしました。

私たちは新型コロナウィルス感染症(COVID-19: Coronavirus Disease 2019)に対する不安と共に暮らしています。状況は日々刻々と変化しており、この未曽有のウィルスに対し、手探りの対応が続いています。そこで今回は、今後長期化すると予想される現在の社会状況を踏まえ、まずは現在の状況下における、認知症の人やその家族、そして介護に関わる人々の「いま」について共有するとともに、いわゆる「withコロナ」「afterコロナ」における認知症フレンドリー社会の在り方を議論しました。

 

■セミナー動画(全編94分、日本語字幕付き)

(動画編集:Fraky Design Works 山口 健壱)


■登壇者からの現状レポート

丹野 智文(おれんじドア 代表)

私自身は、人とのつながりを保つために仕事を続けている。同じく認知症の人とはオンラインのビデオツールを使い、お互いに顔を見ながら交流を続けている。実際に会うのは職場の人や家族に限られているが、離れている人ともつながりが途切れることがないよう、デジタルデバイスを積極的に活用するなど、工夫をすることが重要と考える。生活に様々な制限を受ける状況だからこそ、認知症の本人の自己決定権を大事にすべき。


鈴木 森夫(公益社団法人 認知症の人と家族の会 代表理事)

全国から寄せられている声や課題として、施設に入居している認知症の人の家族や、認知症の人を遠距離介護している家族が、本人と会うことが難しくなっていることがある。また感染予防が優先され、様々な介護サービスの休止や新規の受け入れ停止などもあり、家族の負担も増している。本会が取り組んでいる「つどい」は、本人同士、家族同士が直接会って悩みや想いを共有する交流の場として大切にしてきたが、今は会うことが難しくなり、改めてその重要性を感じている。避けるように言われている「密接」は介護そのものであり、「密集」は会の活動の要である。この状況を乗り切るために、従来の電話相談や新しいデジタルデバイスの活用も積極的に取り組みたい。


髙瀬 義昌(医療法人社団 至髙会 たかせクリニック 理事長)

在宅医療を軸に、多くの認知症の人と関わっている。月に1,2回の定期訪問と緊急対応などに取り組んでいる。患者さんとして私が担当している認知症の人もデイサービスの利用や入居施設での面会制限に直面している。COVID-19によって、不安な気持ちを抱えている方もいらっしゃる。近い距離でケアをすることを大事にしていたので、これまでとは変化が生じている。また医療提供者として、感染対策に関わる情報提供にも取り組んでいる。今後は、オンラインとオフラインをうまく組み合わせながら、医療・看護・介護の連携を進め、地域の中で充実したケアを進めていきたい。


笠井 聡(SOMPOホールディングス株式会社 介護・ヘルスケア事業オーナー 執行役)

当社は全国で介護付きホームやサービス付き高齢者向け住宅、通所介護事業所などを運営している。当社が運営する施設でもCOVID-19の感染者が発生している。集団生活である以上、完全に感染を防ぐことはやはり難しい。こうした状況下で認知症の人やご家族の生活を守るために、「感染予防の徹底」と「スタッフの継続勤務への環境整備」に取り組んでいる。COVID-19によって、認知症の人やご家族の生活が変化し、体調・心の変化が生じていることを受け、丁寧なコミュニケーションを目指している。今後はデジタルデバイスの活用を一層強化し、コミュニケーションの量と質が高まるような取り組みを進めていきたい。


石本 淳也(公益社団法人 日本介護福祉士会 会長)  

介護の現場は、「3密」の状況を避けることはできず、当然だがリモートによるサービス提供は難しい。介護事業の種類によっても、置かれている状況は異なる。入所系事業者・通所系事業者・訪問系事業者それぞれが抱えるリスクや課題も異なる。子育て世代の介護従事者からは、家族への感染リスクや学校の一斉休校に伴い、介護の仕事が続けられないといった課題も挙がっている。本会としてすでに、2020年4月24日付で厚生労働大臣宛に介護現場の声を具体的にまとめて、要望を出している。今後感染の第2波、第3波を想定して、介護現場が維持されるように備えたい。


猿渡 進平(大牟田市役所 相談支援包括化推進員/白川病院 医療連携室長/認知症未来共創ハブ 運営委員)

病院のソーシャルワーカーであるとともに、大牟田市の認知症施策推進に取り組んでいる。地域の活動が中止になったことで、認知症の人に大きな影響を与えている。介護サービス利用者以上に、認知症ではあるが、介護保険サービスを受けておらず、地域の支えとともに生活している人への影響は特に大きい。こうした状況を打開するため、オンラインでの活動を取り入れている。初めは抵抗を持っていた方も、使い方を理解し慣れることで上手く対応できるようになった。今後コミュニケーションツールとしてのオンラインが普及するためには、こうしたデジタルデバイスを介護保険サービスにおける福祉用具の一部として扱うなどの工夫が必要ではないか。


鈴木 隼人(衆議院議員)

政府も認知症の人やご家族の日常生活が継続できるようにこれまでもサービス要件の見直しや緩和などの措置を行ってきている。施設でのオンライン面会など、施設整備によって対応できる部分は改善されるよう、補正予算にメニューが追加されるよう国会での議論を進めている。地域の集まりなどについても、今後再開できるようガイドラインの整備なども進めていきたい。また昨年から議論を続けている認知症基本法の成立に向けた歩みも、COVID-19の状況を見ながら進めていきたい。

 

■ディスカッション

後半では登壇者の皆さんと、下記のテーマをもとに意見交換を行いました。

・これまで築いてきた地域のつながりをどう維持するか
・「withコロナ」「afterコロナ」の社会の中で認知症の人を取り巻く状況はどう変わるか

多くの方々から、これまでのやり方に戻すことを考えるのではなくて、新たな方法を模索することに注力していきたいというご意見が挙がりました。特にデジタルデバイス活用による、オンラインでの交流機会の創出は喫緊の課題です。またオンラインへの対応によって、認知症の人やご家族へデジタルデバイスの使用方法を教える機会が世代間交流につながることへの期待や、遠方のご家族が面会機会を増やすことができるといった新たなメリットについても言及がありました。また対面とオンラインの併用によって、コミュニティの質がより高まることへの期待もありました。

「できなくなったことを振り返るのではなく、できることに目を向ける」ことで、私たちが置かれた状況を好機ととらえて、新たなチャレンジのきっかけにしたいという前向きな視点をマルチステークホルダーで共有する機会となりました。

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