【開催報告】シンポジウム「AMR対策における抗菌薬適正使用のために求められる病診連携に向けて~データに基づく円滑な連携を目指す~」(2022年9月14日)
日付:2022年11月30日
タグ: AMR

AMRアライアンス・ジャパン(事務局:日本医療政策機構)は、サーベイランスデータに基づく抗菌薬適正使用の推進を目的とした公開シンポジウム「AMR対策における抗菌薬適正使用のために求められる病診連携に向けて~データに基づく円滑な連携を目指す~」を開催いたしました。
毎年、世界中で約 120万人が薬剤耐性菌による感染症により死亡していると推定されています。国内では、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、およびフルオロキノロン耐性大腸菌の2種類の耐性菌による菌血症だけで年間8000人もの人々が命を落としていることが明らかになっており、薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)対策が急がれています。AMR対策においては、耐性菌の増加を防止するために抗菌薬使用量を適正に保つことが重要です。そのため、2016年に作成された「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2016-2020)(NAP: National Action Plan)」において「医療機関における抗微生物薬の適正使用の推進」が設定されました。これを受けて厚生労働省は「抗微生物薬適正使用の手引き」の作成・改定や「抗菌薬適正使用支援加算」をはじめとする診療報酬により適正使用を推進してきました。こうした取り組みを含む関係者の努力により着実に抗菌薬使用量は減少しているものの、NAP2016-2020において設定された「2020年の人口千人あたりの一日抗菌薬使用量を2013年の水準の3分の2に減少させる。」という成果目標は達成されておらず、より一層の取り組みが期待されています。我が国の抗菌薬使用においては診療所における広域抗菌薬の適正使用の推進が課題であり、2022年診療報酬改定においてこれまでの感染防止対策加算から感染対策向上加算への名称および要件の変更がなされ、病診連携を促進し診療所における薬剤耐性対策を推進するための診療報酬改定がなされました。この動きを加速すべく地域の診療所や保険薬局は新たな連携体制構築を急いでいるものの、新たな加算の算定要件や体制整備に関して戸惑いの声も聞かれています。
一方、抗菌薬の適正使用を評価するためには、現状の正確な把握が重要です。NAP2016-2020においても動向把握のためのサーベイランスシステムの整備が目標として設定されており、感染症の発生状況や感染対策の現状を把握するための感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE: Japan Surveillance for Infection Prevention and Healthcare Epidemiology)や院内感染対策サーベイランス(JANIS: Japan Nosocomial Infections Surveillance)をはじめとしたサーベイランスが整備されました。一方、国内における抗菌薬使用量に関しては「全国抗菌薬販売量サーベイランス」や「匿名レセプト情報・匿名特定健診等情報データベース(NDB: National Database for Prescription and National Health Check-up)」を用いた一部の保険請求データを元に行われています。近年、保険薬局におけるレセプトコンピュータ上のデータ等を元にした体系的なサーベイランスデータの蓄積も始まっており、国内における抗菌薬使用量の正確な把握による適正使用の取り組みをリアルタイム、診療科単位でモニタリングすることが可能となりつつあります。
以上のような適正使用および抗菌薬使用量に関する国内の動向を踏まえ、本シンポジウムでは、抗菌薬適正使用に向けて整備されているサーベイランスデータを活用し、今後、外来および診療所において必要な取り組みと大病院の役割について各ステークホルダーによるディスカッションを実施しました。
【開催概要】
- 日時:2022年9月14日(水)18:30-20:00
- 形式:オンライン(Zoomウェビナー)
- 言語:日本語/英語(同時通訳あり)
- 参加費:無料
- 主催:AMRアライアンス・ジャパン(事務局:特定非営利活動法人 日本医療政策機構)
【プログラム】(日本時間・順不同・敬称略)
18:30-18:35 開会の辞
- 田畑 裕明(衆議院議員/自由民主党 厚生労働部会長)
18:35-18:50 基調講演1「保険薬局のレセプトコンピュータ上のデータを用いた抗菌薬使用動向調査の結果について」
- 村木 優一(一般社団法人 日本医療薬学会 理事/京都薬科大学 臨床薬剤疫学分野 教授)
18:50-19:05 基調講演2「J-SIPHEの運用から見える日本のAMR対策に求められる病診連携のあり方について」
- 松永 展明(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター AMR臨床リファレンスセンター 臨床疫学室長)
19:05-19:10 休憩
19:10-19:50 ラウンドテーブルディスカッション「データに基づく抗菌薬適正使用のための連携促進に向けた次の打ち手」
参加者
- 釜萢 敏(日本医師会 常任理事)
- 菅井 基行(国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター(WHOコラボレーティングセンター)センター長)
- 長江 翔平(厚生労働省 健康局 結核感染症課)
- 前田 稔彦(まえだ耳鼻咽喉科クリニック 院長)
- 松永 展明(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター AMR臨床リファレンスセンター 臨床疫学室長)
- 村木 優一(一般社団法人 日本医療薬学会 理事/京都薬科大学 臨床薬剤疫学分野 教授)
モデレーター:
- 河野 結(日本医療政策機構 マネージャー)
19:50-19:55 質疑応答(オンライン)
19:55-20:00 閉会の挨拶
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