【開催報告】第59回定例朝食会「技術革新と医療技術評価」
日付:2016年10月28日
今回の朝食会では、「技術改革と医療技術評価」をテーマとし、制度の内容、国際比較ならびに今後の政策などについて東京大学公共政策大学院客員教授・大西昭郎氏にお話しいただきました。
~講演内容要旨~
■技術革新と医療制度
1980~90年にかけて、バイオテクノロジー、エレクトロニクス、材料技術の基礎が作られ、バイオ遺伝子組み換えの技術も台頭してきた(2000年に最初のヒトゲノム解析が完了)。技術の進歩に伴い医療の制度面でもどのように新しい医療技術を取りいれていくかが検討され始めた。米国では医薬品と医療機器の技術の違いが着目され、安全性や有効性を評価する薬事制度の再検討が進み、1997年にFDA改革法が成立した。
また、診療報酬の面では、1983年から、治療の方法や手段ではなく診断群ごとに治療費が評価されるDRG(診断群分類)の導入が始まった。これにより、原則として、薬、機器や手技ごとの費用ではなく、診断された疾病コードごとに病院の報酬が定まり、支払いがなされることとなった。
■医薬品と医療機器の違い
医薬品と医療機器はその性質が大きく異なる。医薬品はそのもととなる物質を「発見」することで特許が認められるのに対し、医療機器は、「発明」がその対象であり、性能や効果等を発揮する機構やメカニズムの新規性があって初めて認められる。
このため、新しい医療機器が必ずしも新しい特許になるとは限らない。治験の実施においても大きな違いがある。
医薬品の場合、治験を中断しても通常の治療に戻ることが難しくない場合も多いが、植込み型の医療機器の場合などは、体内に埋め込んだ医療機器を取り出すことに伴うリスクがあることから治験の中止は容易ではない。
■日本の医療制度
日本では、2014年に「薬事法」が「薬機法」に改正されるまで、医薬品の規制の考え方を反映した薬事法のもとで医療機器、さらには再生医療製品の規制が運用されてきた。また、保険制度に関しては、診療報酬、薬価、材料価格(一部の医療機器はここに含まれる)や評価の方法を2年ごとに改訂することで運用されてきた。
ここにきて高齢化と技術革新により医療費の増額は今後10年で1.5倍になるとも言われており、医療技術評価の試行が検討されているほか、制度についていろいろな議論がなされている。
■医療評価への取り組み、将来展望
医療技術評価は、個別の技術や製品の有用性をどう評価するかという観点に加えて、医療制度の枠組みの中で、それら製品や技術の使い方などがもたらす医療の質の向上を評価することを検討していくことも重要ではないだろうか。医療の目標を「医療の質」というところに置き、これらが計測できるアウトカム指標などをとりいれた評価制度の取り組みの動きも欧米では始まっている。
今後の動向に期待したい。
開催日:2016-10-14
調査・提言ランキング
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【政策提言】保健医療分野における気候変動国家戦略(2024年6月26日)
- 【出版報告】医療政策の形成過程における患者・市民参画(PPI)の手引き―患者・市民と行政それぞれに求められる取り組みとその好事例(2024年3月31日)
- 【政策提言】腎疾患対策推進プロジェクト 2023「患者・市民・地域が参画し、協働する腎疾患対策に向けて」政策提言・地方自治体における慢性腎臓病(CKD)対策好事例集(2024年2月14日)
- 【お知らせ】若年層へのブレインヘルスに関する国際調査に参画「The Next Generation (NextGen) Brain Health research program」(2024年7月1日)
- 【調査報告】「2023年 日本の医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査」(2024年1月11日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【翻訳公開】「薬剤耐性(AMR)の脅威の高まりに対応するための実践的な打ち手の要求」(2024年7月3日)
- 【政策提言】「認知症施策推進基本計画策定へ、今必要な3つの視点」~誰もが、いつでも、「共に生きる」社会の実現を目指して~(2024年4月1日)
- 【政策提言】患者当事者支援プロジェクト「政策形成過程への患者・市民参画の推進に向けて」(2024年5月14日)
注目の投稿
-
2024-07-01
【申込受付中】患者当事者プロジェクト オンライン専門家会合「患者・当事者・市民と作る、これからの医療政策」(2024年7月26日)
-
2024-07-17
【開催報告】超党派国会議員向け医療政策勉強会「30分で伝える医療政策最前線:腎臓病の克服を目指してーCKD対策のさらなる強化に向けてー」(2024年6月7日)
-
2024-07-18
【申込受付中】(ハイブリッド開催)腎疾患対策推進プロジェクト 公開シンポジウム「患者・市民・地域が参画し、協働する腎疾患対策に向けて」(2024年8月28日)
-
2024-07-22
【HGPI政策コラム】(No.44)-プラネタリーヘルスプロジェクトより-第9回:コネクティング・クライメート・マインズ-気候変動とメンタルヘルスを結びつける
-
2024-07-23
【申込受付中】(オンライン開催)HGPIセミナー特別編「カビが引き起こす感染症と薬剤耐性対策を考える ~薬剤耐性真菌という新たな脅威」(2024年8月23日)