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【HGPI政策コラム】(No.25)-こどもの健康チームより-こどもの健康コラム4-思春期のメンタルヘルスリテラシーとその重要性

【HGPI政策コラム】(No.25)-こどもの健康チームより-こどもの健康コラム4-思春期のメンタルヘルスリテラシーとその重要性

<POINTS>

・思春期のこころの不調は、全疾患のうち4番目に多いことが知られている

・2022年より約40年ぶりに、高校生が学校で「精神疾患の予防と回復」について学ぶ機会を得た

・小学校高学年から中学生においても、メンタルヘルスリテラシー獲得の機会創出が期待される

 

思春期は、心身の成長に伴ってこころの不調が生じることもあると知られています。学習指導要領の改訂によって2022年より、高校生を対象とし、「精神疾患の予防と回復」に関して保健の授業で扱われることが決定しました。本稿では思春期のこころの不調と学ぶ機会についてご紹介したいと思います。

 

「思春期」のこころの不調

日本人の思春期は、8歳頃から18歳頃までに相当すると言われており、この時期は主に家庭や学校生活を中心とした集団のなかで社会的生活を行います。こどもから大人へと成長することに伴い、身体的・精神的な発達により様々な健康問題が起きやすく、2017年の患者調査によると、5歳~19歳で上から4番目に多い頻度で、精神及び行動の障害が発生していることが明らかとなっています(※1)

思春期は、心と身体が成長する過程ということもあり、自我の形成に多くの要因が関連すると言われています(図1)(※2)。この時期に好発する精神疾患として、統合失調症、うつ病、パニック障害、社会恐怖(社会不安障害)、強迫性障害、摂食障害(神経性無食欲症、神経性大食症)が広く知られています。症状によっては入院が必要な場合もあり、普段から受診している医師(かかりつけ医)から精神科の専門医への適切な連携が重要です。

厚生労働省によると、“こころの病気で通院や入院をしている人たちは、国内で約420万人にのぼりますが(2017年)、これは日本人のおよそ30人に1人の割合”であり、”生涯を通じて5人に1人がこころの病気にかかる”とも言われていることから、決して珍しい病ではない事がわかります(※3)。そのため、こころの不調に対する理解やそのための教育が重要です。

また、精神疾患と診断されなくとも、10代の自殺は増加傾向にあり、学校で悩みを起因とする動機が3割を超えていることが示されていることから(図2)(※4)、こころの不調に対する相談体制や早期発見が重要になっています。

図1 出典:e-ヘルスネット 思春期のこころの発達と問題行動の理解

図2 出典:児童生徒のこころとからだの支援ハンドブック― メンタルヘルス課題の理解と支援 ―、公益社団法人 日本精神保健福祉士協会

 

高校生のこころの教育

2021年3月に発刊された文部科学省の「改訂『生きる力』を育む高等学校保健教育の手引」では、高等学校保健教育として第1学年に「精神疾患の予防と回復」が追記されました(※5)。これによると、(1)精神疾患の特徴や精神疾患への対処について、理解することができるようにする。(2)精神疾患の予防と回復について、課題を発見し、疾病等のリスクの軽減、生活の質の向上、健康を支える環境づくりなどと解決方法を関連付けて考え、適切な方法を選択し、それらを説明することができるようにする。(3)精神疾患の予防と回復の学習に主体的に取り組もうとすることができるようにする、といった3点が単元目標として挙げられています。このたびの学習指導要領の改訂によって、精神疾患が発症しやすいとされる時期に、メンタルヘルスリテラシー(MHL: Mental Health Literacy)の獲得が期待されます。

一方で、初等中等教育においてMHLを獲得する機会の確保が十分に整っているとは言い難い現状も指摘されています。日本では、1972年施行の“中学校学習指導要領 第7節保健体育(6)精神の健康”に学ぶ機会が明記されていたことを最後に、以降は精神疾患に関する記載が無くなりました。このような背景を踏まえ、当機構では2020年7月に「メンタルヘルス2020 明日への提言」を公表し、ライフコースに応じてメンタルヘルス課題に対処できるよう、初等中等教育におけるメンタルヘルスの教育及び支援体制を充実させる(※6)ことの重要性について言及しています。また、前述の患者調査においても、5歳頃から精神及び行動の障害が上位という調査結果が報告されていることから、今後はより低年齢層にもMHL獲得の機会が充実されていくことが期待されます。

 

【参考文献】

※1 厚生労働省「2017年 患者調査の概況」(アクセス日 2021年7月21日)
※2 清田 晃生( e-ヘルスネット)「思春期のこころの発達と問題行動の理解」(アクセス日 2021年7月21日)
※3 厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス こころの病気について理解を深めよう」(アクセス日 2021年9月12日)
※4 公益社団法人 日本精神保健福祉士協会「児童生徒のこころとからだの支援ハンドブック― メンタルヘルス課題の理解と支援 ―」(アクセス日 2021年8月3日)
※5 文部科学省、高等学校保健教育参考資料(2021年3月) 「改訂『生きる力』を育む高等学校保健教育の手引」(アクセス日 2021年8月11日)
※6 日本医療政策機構 メンタルヘルス政策プロジェクトチーム(2020年7月)「『メンタルヘルス2020 明日への提言』メンタルヘルス政策を考える5 つの視点」(アクセス日 2021年8月17日)

 

【執筆者のご紹介】
田村 元樹(たむら もとき)(特定非営利活動法人 日本医療政策機構 プログラムスペシャリスト/浜松医科大学 健康社会医学講座 博士課程在学中)


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