(開催報告)日本 – 英国 Workshop on Health and Medical Innovation, Regulatory Science
日付:2014年5月22日
![(開催報告)日本 – 英国 Workshop on Health and Medical Innovation, Regulatory Science](https://hgpi.org/wp-content/uploads/20140522main.jpg)
日本医療政策機構(Health and Global Policy Institute:HGPI)は2014年4月1日(火)、ロンドン在英国日本国大使館にて「Japan-UK Workshop on Health and Medical Innovation, Regulatory Science」を開催いたしました。
日本では、高齢化による医療費増大と出生率の低下により、持続可能性を考慮した医療および福祉のあり方が求められています。また、安倍政権により発表された成長戦略では医薬品・医療機器、医療関連IT技術や再生医療を発展させることを目指しています。これらの課題や目指すべき姿は、日英で共通部分が多く見られます。
そこで本ワークショップでは、日英両国における医療分野でのイノベーションを促進するために、どのような政策が必要とされているか議論すべく、HGPIと在英国日本国大使館の共催で開催されました。
■当日のプログラム:
14:00-14:05日本大使館挨拶
14:05-14:15 宮田 俊男(日本医療政策機構 エグゼクティブ ディレクター/医療政策ユニット長)
14:15-15:35
【セッション1】: 「健康・医療のイノベーションと医薬品アクセス」
-加藤 益弘氏(東京大学トランスレーショナル・リサーチ・イニシアティブ特任教授)
-竹之下 隆氏(英国塩野義製薬CEO)
-藤原 康弘氏(独立行政法人 国立がん研究センター企画戦略局長 兼 同中央病院 乳腺・腫瘍内科)
-Francesco Pignatti氏(Head of Oncology, Hematology and Diagnostics,EMA注1)
15:50-16:40
【セッション2】: 「レギュラトリーサイエンスとR&Dエコシステム」
-佐藤淳子氏(厚生労働省/PMDAリエゾンオフィサー EMA駐在)
-Nadeem Sarwar氏 (VP and Head, Genetics & Human Biology, Eisai Inc.)
-中島洋氏 (国際情報通信統括本部事業主管日立ヨーロッパ社)
-大沼真一氏 (ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン大学眼科学研究 所教授)
-Bob Clay氏 (VP global regulatory affairs, AstraZeneca)
16:30-17:00
【セッション3】: ディスカッション
17:00-17:30
ネットワーキング
■当日の議論:
ワークショップは、日本大使館の挨拶で幕を開けました。
続いてセッション1に先立ち、宮田 俊男(日本医療政策機構 エグゼクティブ ディレクター/医療政策ユニット長)が、日本のヘルスケアイノベーション戦略、最新の規制改革の概要を述べました。また、日英共に、米国と比べ産学連携によって生み出された医薬品が少ない現状にも触れました。
セッション1では、「健康・医療のイノベーションと医薬品アクセス」と題し、加藤 益弘氏(東京大学トランスレーショナル・リサーチ・イニシアティブ特任教授)、竹之下 隆氏(英国塩野義製薬CEO)、藤原 康弘氏(独立行政法人 国立がん研究センター企画戦略局長 兼 同中央病院 乳腺・腫瘍内科)、Francesco Pignatti氏(Head of Oncology, Hematology and Diagnostics, EMA注1)にご登壇いただき、日英の医療関連施策を振り返り、今後の展望について理解を深めました。
加藤氏は、ここ60年間医薬品の研究開発が伸び悩んでいる現状を述べ、医薬品研究開発におけるオープンイノベーションの重要性をお話しくださいました。外部の開発力の活用や、知的財産権の譲渡により革新的な発展を生み出すオープンイノベーションの具体例として、大学機関やバイオベンチャーと協働する製薬会社の取り組みの例をご紹介いただき、今後の日英の研究開発のあり方を考える機会となりました。竹之下氏は、製薬産業誘致に関わる税制度や医療技術評価導入について述べられました。製薬産業の研究開発費に対する課税がEU各国に比べて日本で厳しくなっている上、国際財務報告基準 (IFRS)と日本基準(J-GAAP)の差異からも、製薬企業が日本に留まるメリットが少ないことを指摘し、英国のパテンドボックス税制の紹介をすると共に今後の日本の税制の課題をお示しいただきました。また、日本で医療技術評価を導入する際の課題と対応策もお話いただき、日本が医療技術評価導入における先導役となる可能性について述べられました。
藤原氏は、抗がん剤へのアクセスについて述べられました。先進医療等、医薬品・医療機器のアクセスを迅速にするための方法をご紹介いただいた後、薬事承認と保険適用の関係について述べられました。医薬品アクセスには患者、被保険者、医療従事者、規制当局等、様々な立場の人々が関わっており、すべての関係者を交えた議論に基づいて対応すべきだと強調されました。
Pignatti氏は抗がん剤の近年動向を発表し、主に承認手法として無増悪生存期間(治療中および治療後に疾患の悪化なく生存する期間の長さ)を承認申請のための臨床エンドポイント(臨床研究において患者の状態や判断を反映する特性値)とすることに関する議論、ライセンシングにまつわる論点整理等、抗がん剤にまつわる課題について事例を含めて説明されました。また最後には抗がん剤の早期アクセスに関する将来展望について述べられました。
セッション2では、「レギュラトリーサイエンスとR&Dエコシステム」と題し、佐藤淳子氏(厚生労働省/PMDAリエゾンオフィサー EMA駐在)、Nadeem Sarwar氏(VP and Head, Genetics & Human Biology, Eisai Inc.)、中島洋氏(国際情報通信統括本部事業主管 日立ヨーロッパ社)、大沼真一氏(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン大学眼科学研究所教授)、Bob Clay氏 (VP global regulatory affairs, AstraZeneca)にご登壇頂き、レギュラトリーサイエンス(規制科学)とR&D(研究開発)のエコシステムについて理解を深めました。
佐藤氏からは、EMAとPMDAによるレギュラトリーサイエンスの牽引とパートナーシップについてお話いただきました。審査報告書やWebサイト、日本薬局方等の英文情報の充実により、他国との協力関係を構築し、より迅速に医療品・医療機器を提供していく体制を進めていくと述べられました。
Sarwar氏はゲノムと臨床ビックデータの活用について述べられました。世界各国で集積されている遺伝子型および表現型に関するデータ、発展を続ける遺伝子解析技術の利用により、新たな標的薬剤の発見や個別化医療の実現につながっている現在の状況をお話いだきました。
中島氏は、イギリスNHSと日立のIT技術を用いた新たなヘルスケアプロジェクトについて述べられました。日立ヨーロッパ社の主な事業をご紹介いただいた後、マンチェスターにおける費用対効果の高い糖尿病予防などのNHSと協働で実施しているプログラムの説明をしていただきました。
大沼氏は、トランスレーショナルリサーチ(探索医療)における日英協働の展望について述べられました。新薬の開発につながる知識共有やコストや時間の削減に寄与する協働の重要性を述べる一方、特許の問題や、トランスレーショナルリサーチにおける日英共同出資の不足、イギリスで学ぶ日本学生および研究者の減少等を課題に挙げ、今後の協働の在り方について課題提起されました。
Bob Clay氏は、ライセンシングの実例を挙げながら、がん治療薬の承認のあり方について述べられました。EMAのパイロットプロジェクトなどを紹介しされました。
セッション3のパネルディスカッションでは、セッション1、セッション2での発表を踏まえた議論がロンドン在英国日本国大使館のファシリテーションによって行われました。そして互いの国での知見をどのように活用すべきかについて、活発な議論と意見交換がなされました。
パネルディスカッションの後、参加者の交流の時間も設け、日英の医療イノベーション促進につながる人材交流がなされました。
注1:EMAはEUの医薬品規制機関
開催日:2014-04-01
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