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【開催報告】イブニングセミナー 「NCDsの予防と対策における市民社会の役割―NCD共通課題の共有と協働型社会の実現に向けた道筋とは―」(2019年11月14日)

【開催報告】イブニングセミナー 「NCDsの予防と対策における市民社会の役割―NCD共通課題の共有と協働型社会の実現に向けた道筋とは―」(2019年11月14日)

心疾患、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患、メンタルヘルスなどに代表される非感染性疾患(NCDs: Non-communicable Diseases)は世界最大の死因となっています。日本医療政策機構は、2013年よりNCDsの市民社会のための協働プラットフォームであるNCD Allianceの日本窓口として、マルチステークホルダーがフラットに議論できる場を提供し、NCDs対策において市民社会が果たす役割の重要性を国内外に発信しています。包括的かつ疾病横断的なNCDs対策をさらに促進すべく、2019年10月にNCD*アライアンス・ジャパンをリニューアルし、再始動することにいたしました。

 

 


この度NCD Alliance CEOのKatie Dain氏をお迎えし、NCDsの予防と対策において市民社会が果たす役割の重要性や、よりインパクトのあるアドボカシー活動の展開について語って頂きました。また、質疑応答を通し、会場の皆様と一緒に議論を深めました。
* NCDアライアンス・ジャパン(NCD Alliance Japan)の”NCD”は、NCD(National Clinical Database)様の許諾を得て、使用しています。

■NCD Allianceの活動について
NCD Allianceは、様々なNCD関連課題に対処するため、2009年に4つの国際連盟(国際糖尿病連盟(IDF: International Diabetes Federation)、国際対がん連合(UICC: Union for International Cancer Control)、世界心臓連盟(WHF: World Heart Federation)、国際結核・肺疾患連合(The Union: International Union Against Tuberculosis and Lung Disease))によって発足された。現在に至るまで、約170か国に展開し、約2000もの組織とのネットワークを有する市民社会の協働プラットフォームとして活動を続けている。また65の国や地域で、各国におけるアライアンスが展開されている。
NCDsはがん・糖尿病・循環器疾患・慢性呼吸器疾患・メンタルヘルスをはじめとする慢性疾患をまとめて総称したものである。全世界におけるNCDsによる死亡者数は毎年4,100万人にものぼり、世界の全死因においてNCDsは約71%を占めている。そのうち約1,500万人は60歳未満で亡くなっており、予防可能であると考えられている。経済的にも今後20年間でNCDsが世界経済にもたらす損害は47兆米ドルとも言われる一方で、対策は進んでいない。また特に中低所得国において、NCDsに罹患することによる貧困やその国の経済に与える影響が顕著であり、大きな問題となっている。
NCD Allianceは発足当初から、NCDsの主要リスク因子であるアルコール、たばこ、不健康な食事、運動不足の4つに焦点を当てて活動しており、現在はHIV・結核や精神疾患等多くの関連疾患対策にも活動範囲を広げている。
またNCDsは個人のライフスタイルだけでなく、社会・経済状況や文化、気候といった社会的・環境的要因も大きく影響する。そのため、近年では当事者の声を集めながら、各国・地域における医療制度にNCDs対策を組み込み、適切なプライマリーケア提供体制を整備することや、健康開発援助の資金調達を進める等活動を展開している。
2009年設立当初は、まずNCDsを政治課題として認知させるべく、国連総会でのNCDに関するハイレベル会合へ参画する等、アドボカシー活動を中心に取り組んでいた。現在はアドボカシー活動の他、各国政府のNCDs対策への姿勢や取組の進捗をチェックする活動や市民社会の能力開発、各国・地域における好事例の共有に重点的に取り組んでいる。

■これまでの活動から得た学び「NCDs共通課題の共有と協働型社会に向けた道筋」について
アライアンスとして活動していくことには、いくつものメリットがあると考えている。 
・より早く問題を解決できる 
・共通の優先的に取り組む課題があり、力を合わせることができる 
・豊かなリソースがある
・参加団体によって資金調達、エビデンスに基づいた活動など、それぞれ得意な能力があり、それらを生かせる 

設立から10年間の活動の中で、小規模で活動するよりもアライアンスとして市民社会がまとまって活動することで、実際に上述のようなメリットを生かし、情報や資金、個々人・団体が持つスキル・強み等のリソースを上手く活用するとともに、目的を早く達成できることを学んだ。一方で、共通課題・目的を共有することは難しく、また各個人・団体の理念がきちんと反映されないのではないかというメンバーの懸念があり、協働は容易ではない。そのため、「何を目的として、何を、誰と協働し、どうやって目的を達成するのか」について、しっかりと検討しておくことが必要だ。
特に設立初期の段階では、明確で、かつ達成可能なゴールを設定し、戦略的に活動を展開し、着実に実績を残すことが重要である。NCDsには非常に多岐に渡る疾患、要因があり、それらすべての課題を同時に解決することは難しい。その時の政治状況や環境に合わせて、各メンバーと丁寧なコミュニケーションを図りつつも、迅速に意思決定し、優先課題に注力する必要がある。それがゴールの達成につながり、活動の過程で協働体制がより強固となる。まずは達成しやすい目標から活動をはじめ、徐々に活動範囲を広げるのが賢明である。
また誰を巻き込むのかについても、戦略を立てることが必要だ。目的達成において鍵となる団体・個人、あるいはNCDs関連の団体の他にも、パートナーを広げることで組織や社会に変革をもたらすことができる。実際にNCD Allianceでは、各国の政府機関や国際保健機関(WHO: World Health Organization)等の国際機関、医療・健康関連団体、当事者団体の他に、女性権利団体や環境関係、金融関係団体ともパートナーシップを結んでいる。
明確なゴール設定、適切なパートナーとの信頼関係構築を行った上で、アライアンスの持続可能性を高めるためには、組織のガバナンスが重要だ。意思決定、責任者を明確にし、事務局を組織することに加え、各活動において、報告書等目に見える成果物を作成し、第三者の評価を受けることで活動の精度を高めていくことができる。そして、何よりもNCDsと共に生きる当事者の声に耳を傾けることが重要である。彼らのニーズを把握することが適切な政策提言や活動につながり、それこそがNCD Allianceの存在意義であると考えている。

(写真:高橋 清)


■プロフィール
Katie Dain氏
NCDs関連課題解決に向けて設立された市民社会の協働プラットフォームであるNCD Allianceの代表取締役を務める。NCD Allianceが設立された2009年から活動に携わってきた。NCDに関する専門家として広く認知されており、現在は世界保健機関(WHO: World Health Organization)のNCDsに関するハイレベル独立委員会のメンバーや国連ハイレベル会合の市民社会ワーキンググループ共同議長、ランセットにおける最貧困層におけるNCDsに関する委員会メンバーとして活躍している。持続可能な開発に関わる課題について広い専門知識と経験を有しており、グローバルヘルスや女性への暴力と健康等のジェンダーに関する問題に精通している。NCD Allianceへの参画前には、国際糖尿病連合(IDF: International Diabetes Foundation)他、国際NGO団体や政府機関へのアドボカシー活動や政策提言等を経験。シェフィールド大学卒業後、東洋アフリカ研究学院(SOAS: the School of Oriental and African Studies)にて紛争・暴力・国際開発学科にて修士号を取得。

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