第11回朝食会「Narrative Based Medicine」
日付:2007年7月5日
去る2007年7月5日、第11回朝食会を開催致しました。性差医療・女性外来の第一人者であり、また千葉県の医療政策の中心的人物でいらっしゃいます千葉県立東金病院の天野恵子先生に「Narrative Based Medicine」というテーマでご講演いただきました。多数の皆様にご参加いただき、誠にありがとうございました。
(要旨)
微小血管狭心症の患者さんに出会った事をきっかけに、病気の成り立ち・予防・診断・治療の全ての過程に存在する男女の性差に関して考えるようになった。世間ではEBM(Evidence Based Medicine)が普及していったが、一方で、Narrative Based Medicineの考え方が大事であるとの声が上がってきた。正規分布の標準から外れる人々の治療には、訴えを良く聞くことによってのみ提供できる医療が必要である。
もともと女性外来や性差医療の際に最も大切にしていたのは、訴えに耳を傾け、患者さんに共感し、そして寄り添うという事だった。2001年5月に鹿児島大学附属病院の第一内科に初めての女性外来を立ち上げた時には①初診では30分以上話を聞く、②どんな主訴でも良い、③女医が話をきく、④紹介状は必要ない、を4本の柱とした。現在47都道府県全てにおいて女性外来が立ち上がっている。また性差医療情報ネットワークというNPOを立ち上げ、女性外来情報・男性外来情報を提供する事も始めている。
元来、産婦人科のテリトリーを侵すつもりはなく、現在の医療では取りこぼしている患者さんを救う意識でいた。だが、マスコミの取り上げ方としては、女性医師による女性のための女性の医療であったため、泌尿器・産婦人科・乳腺・精神科・肛門科に関する悩みを持った患者さんが集まってきた。この段階では、あまりNarrative Based Medicineとはならなかった。その後勉強会などを開催し、漢方・精神科・産婦人科の勉強をこつこつと皆で続けてきた。結果、女性医師からも女性外来をやりたいとの希望が出るようになり、一方で患者さんからも女性外来に対する満足の声が聞かれる様になった。
千葉県では堂本知事の支援のもと、地域に偏りが無いように10の女性外来を立ち上げた。この10の女性外来の患者満足度調査によると、全体では90%の満足度が得られた。東金病院では74%、それ以外では97,8%の満足度であった。有名になってしまった東金病院には全国から問題を抱えた患者が訪れているためだと考えられる。もともと女性外来を訪れる患者さんの73%はドクターショッピングを繰り返している。また、この患者意識調査における、受診による問題解決度は78%という結果だった。
現在女性外来のデータ収集を行っている。女性が何に困って受診し、どのように良くなっていくのかを明らかにしていく。患者さん達には初診時、1ヶ月時、3ヶ月時、6ヶ月時の症状を入力してもらい、一方、医師側でも患者背景や診断などのデータを入力する。全国にシステムを展開し、今年1月までに791名のデータが集計された。ここまでの結果の解析では、どの年代でも3割が精神疾患であった。若い年代ではその次に多いのが婦人科疾患と頭痛。中高年では、4,5割が更年期障害、その次が精神疾患、その次が不定愁訴、生活習慣病の順だった。また、狭心痛も多かった。治療に関しては、精神疾患の場合は向精神薬が入ってくるが、3割の人たちは傾聴及び漢方が有効。更年期に関しては、7割が漢方に加えて丁寧な説明でOKであり、他の薬は入ってこない。最も評価されていたのは、心身共に診てくれた、丁寧に話を聞いてくれた、他の先生には言ってもらえない事を言ってもらえた、という事だった。
若い医師達には何故女性なのか、と問われる。女性にしか体験できない、わからない事を色々と経験する事によってそうなるのである。更年期の患者さんなどは若い医師を見ると不安に思う事もあるが、若い医師にも更年期に対する医学的知識や情報はある。患者教育を含め、患者さんの満足のためできる事は色々ある。それでもうまくいかないときにはベテランの医師との連携でうまく対処していく。
Narrative Based Medicineでは患者の生い立ち、おかれている環境が重要。それがわからないと、治療ができない。例えば更年期で、いらいらする、夫に対して攻撃的になってしまう。これは、本当は女性ホルモンの枯渇が原因だが、患者さんはこれを過去の記憶・イベント、例えば夫の過去の浮気、に結び付けてしまう。この人達に、今はホルモンがこうなっていて、医学的にこういう状態にある、と説明すると落ち着く事が出来るのである。
(要旨)
微小血管狭心症の患者さんに出会った事をきっかけに、病気の成り立ち・予防・診断・治療の全ての過程に存在する男女の性差に関して考えるようになった。世間ではEBM(Evidence Based Medicine)が普及していったが、一方で、Narrative Based Medicineの考え方が大事であるとの声が上がってきた。正規分布の標準から外れる人々の治療には、訴えを良く聞くことによってのみ提供できる医療が必要である。
もともと女性外来や性差医療の際に最も大切にしていたのは、訴えに耳を傾け、患者さんに共感し、そして寄り添うという事だった。2001年5月に鹿児島大学附属病院の第一内科に初めての女性外来を立ち上げた時には①初診では30分以上話を聞く、②どんな主訴でも良い、③女医が話をきく、④紹介状は必要ない、を4本の柱とした。現在47都道府県全てにおいて女性外来が立ち上がっている。また性差医療情報ネットワークというNPOを立ち上げ、女性外来情報・男性外来情報を提供する事も始めている。
元来、産婦人科のテリトリーを侵すつもりはなく、現在の医療では取りこぼしている患者さんを救う意識でいた。だが、マスコミの取り上げ方としては、女性医師による女性のための女性の医療であったため、泌尿器・産婦人科・乳腺・精神科・肛門科に関する悩みを持った患者さんが集まってきた。この段階では、あまりNarrative Based Medicineとはならなかった。その後勉強会などを開催し、漢方・精神科・産婦人科の勉強をこつこつと皆で続けてきた。結果、女性医師からも女性外来をやりたいとの希望が出るようになり、一方で患者さんからも女性外来に対する満足の声が聞かれる様になった。
千葉県では堂本知事の支援のもと、地域に偏りが無いように10の女性外来を立ち上げた。この10の女性外来の患者満足度調査によると、全体では90%の満足度が得られた。東金病院では74%、それ以外では97,8%の満足度であった。有名になってしまった東金病院には全国から問題を抱えた患者が訪れているためだと考えられる。もともと女性外来を訪れる患者さんの73%はドクターショッピングを繰り返している。また、この患者意識調査における、受診による問題解決度は78%という結果だった。
現在女性外来のデータ収集を行っている。女性が何に困って受診し、どのように良くなっていくのかを明らかにしていく。患者さん達には初診時、1ヶ月時、3ヶ月時、6ヶ月時の症状を入力してもらい、一方、医師側でも患者背景や診断などのデータを入力する。全国にシステムを展開し、今年1月までに791名のデータが集計された。ここまでの結果の解析では、どの年代でも3割が精神疾患であった。若い年代ではその次に多いのが婦人科疾患と頭痛。中高年では、4,5割が更年期障害、その次が精神疾患、その次が不定愁訴、生活習慣病の順だった。また、狭心痛も多かった。治療に関しては、精神疾患の場合は向精神薬が入ってくるが、3割の人たちは傾聴及び漢方が有効。更年期に関しては、7割が漢方に加えて丁寧な説明でOKであり、他の薬は入ってこない。最も評価されていたのは、心身共に診てくれた、丁寧に話を聞いてくれた、他の先生には言ってもらえない事を言ってもらえた、という事だった。
若い医師達には何故女性なのか、と問われる。女性にしか体験できない、わからない事を色々と経験する事によってそうなるのである。更年期の患者さんなどは若い医師を見ると不安に思う事もあるが、若い医師にも更年期に対する医学的知識や情報はある。患者教育を含め、患者さんの満足のためできる事は色々ある。それでもうまくいかないときにはベテランの医師との連携でうまく対処していく。
Narrative Based Medicineでは患者の生い立ち、おかれている環境が重要。それがわからないと、治療ができない。例えば更年期で、いらいらする、夫に対して攻撃的になってしまう。これは、本当は女性ホルモンの枯渇が原因だが、患者さんはこれを過去の記憶・イベント、例えば夫の過去の浮気、に結び付けてしまう。この人達に、今はホルモンがこうなっていて、医学的にこういう状態にある、と説明すると落ち着く事が出来るのである。
申込締切日:2007-07-04
開催日:2007-07-05
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