第6回朝食会「患者になって見る医療」
日付:2006年9月14日

去る9 月14 日、第6 回朝食会を開催いたしました。がん患者会のリーダーとして、ジャーナリストとして活躍していらっしゃる、読売新聞社社会保障部の本田麻由美記者に「患者になって見る医療~医者との意識の違い、米の不思議~」というテーマでご講演いただきました。ご参加の皆様には、雨模様の中お越しいただき誠にありがとうございました。
(要旨)
がん患者になり、病を得るということは3つの戦いであることを知った。不安との闘い、病気との闘い、そして社会・制度との闘いである。孤独な疎外感があり、仕事から疎外されるという不安、医師・家族に八つ当たりも出来ない状況が一番辛かった。自分の病気を知り、治療法を理解した上で選択しようというトレンドを、記者として何度も書いてきたが、実際には非常に難しい。怖さや不安が先立ってしまい、病気を正面から知ろうとできない患者さんも多いのだが、そういう部分に対するサポートは今の日本にはあまりない。
全てを医師に任せるほうがよっぽど楽だと感じてしまうのも無理はない面もある。ただ、それでは思わしくない結果になった時、他者のせいにしがちだし、何より自分が一番苦しむことにもなる。また、セカンド・オピニオンもまだ取りにくい雰囲気はある。自分も待合室で取材ノートを取り出し、セカンド・オピニオンを取る言い出し方を何度も書いて練習したりした。さらに、病気には社会や制度との戦いもある。乳がん治療に関して、欧米では全摘と同時に行う乳房再建手術を選ぶのは当たり前にできるが、日本では人工乳房を用いた再建手術は保険診療にならない。どこかでやってくれるという口コミ情報が患者会では流れるが、あやふやな情報に惑わされることもあり、不公平感に患者たちは苦しむ。受けたい治療を受けられないことが理解し難い。
アメリカ研修の目的は、アメリカの良いところ悪いところ、患者のパワーなどを幅広く見ることであった。まず、医療というサービスに対する捉え方の違いに驚いた。日本では、政府が必要な医療サービスを準備する、命を守ることが当たり前と考えられていて、不足があれば国が悪い、行政の怠慢と批判する。一方で、無保険者を支援するアメリカの市民・民間団体に、政府が皆保険をすべきかを問うたところ、皆保険がいいとは思わないという意外な答が少なくなかった。命に関わるので多くの人に保険を持つようにすべきだが、全て政府が準備するものだとは思わないというのだ。アメリカという国は、医療のようなものまで、チャレンジの機会は保障するが、その結果まで保証するものではないという。
現在のように高度に医療が進み、選択肢が増え、一方で財源が有り余っている訳ではない状況では、乳房再建のようなことまで全てを保障するのは難しいのかもしれないが、日本でももう少し自由度があってもよいのではないかと思う。技術があるのに治療を受けられないということを納得できるだろうか?確かに、命に直結する医療を等しく保証することは重要だが。国の検討会などに出席していると患者の視点が欠けた議論がされているように感じる。
(要旨)
がん患者になり、病を得るということは3つの戦いであることを知った。不安との闘い、病気との闘い、そして社会・制度との闘いである。孤独な疎外感があり、仕事から疎外されるという不安、医師・家族に八つ当たりも出来ない状況が一番辛かった。自分の病気を知り、治療法を理解した上で選択しようというトレンドを、記者として何度も書いてきたが、実際には非常に難しい。怖さや不安が先立ってしまい、病気を正面から知ろうとできない患者さんも多いのだが、そういう部分に対するサポートは今の日本にはあまりない。
全てを医師に任せるほうがよっぽど楽だと感じてしまうのも無理はない面もある。ただ、それでは思わしくない結果になった時、他者のせいにしがちだし、何より自分が一番苦しむことにもなる。また、セカンド・オピニオンもまだ取りにくい雰囲気はある。自分も待合室で取材ノートを取り出し、セカンド・オピニオンを取る言い出し方を何度も書いて練習したりした。さらに、病気には社会や制度との戦いもある。乳がん治療に関して、欧米では全摘と同時に行う乳房再建手術を選ぶのは当たり前にできるが、日本では人工乳房を用いた再建手術は保険診療にならない。どこかでやってくれるという口コミ情報が患者会では流れるが、あやふやな情報に惑わされることもあり、不公平感に患者たちは苦しむ。受けたい治療を受けられないことが理解し難い。
アメリカ研修の目的は、アメリカの良いところ悪いところ、患者のパワーなどを幅広く見ることであった。まず、医療というサービスに対する捉え方の違いに驚いた。日本では、政府が必要な医療サービスを準備する、命を守ることが当たり前と考えられていて、不足があれば国が悪い、行政の怠慢と批判する。一方で、無保険者を支援するアメリカの市民・民間団体に、政府が皆保険をすべきかを問うたところ、皆保険がいいとは思わないという意外な答が少なくなかった。命に関わるので多くの人に保険を持つようにすべきだが、全て政府が準備するものだとは思わないというのだ。アメリカという国は、医療のようなものまで、チャレンジの機会は保障するが、その結果まで保証するものではないという。
現在のように高度に医療が進み、選択肢が増え、一方で財源が有り余っている訳ではない状況では、乳房再建のようなことまで全てを保障するのは難しいのかもしれないが、日本でももう少し自由度があってもよいのではないかと思う。技術があるのに治療を受けられないということを納得できるだろうか?確かに、命に直結する医療を等しく保証することは重要だが。国の検討会などに出席していると患者の視点が欠けた議論がされているように感じる。
申込締切日:2006-09-13
開催日:2006-09-14
調査・提言ランキング
- 【政策提言】フェローによる政策提言プラットフォームプロジェクト「日本における『医薬品の費用対効果評価』のより良い活用に向けて」(2025年5月7日)
- 【政策提言】こどもの健康プロジェクト「知的障がいのある子どもの生涯にわたるメンタルヘルス支援強化に向けて」(2025年4月30日)
- 【政策提言】「がん遺伝子パネル検査への患者アクセス保障と保険外併用療養費制度活用にあたっての留意点」(2025年4月28日)
- 【調査報告】「2025年 日本の医療に関する世論調査」(2025年3月17日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【政策提言】がん対策プロジェクト「乳がん医療の地域格差是正に関する提言書」(2025年1月31日)
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【調査報告】「子どもを対象としたメンタルヘルス教育プログラムの構築と効果検証」報告書(2022年6月16日)
- 【政策提言】我が国の予防接種・ワクチン政策の課題と展望-予防・健康づくり時代に求められるライフコースアプローチとワクチン・エクイティの視点から-(2025年4月25日)
- 【調査報告】「2023年 日本の医療の満足度、および生成AIの医療応用に関する世論調査」(2024年1月11日)
注目の投稿
-
2025-04-17
【申込受付中】(オンライン開催)第134回HGPIセミナー「科学的根拠に基づいた食事のガイドラインを知るー日本人の食事摂取基準を活かすにはー」(2025年5月28日)
-
2025-05-07
【申込受付中】日豪オンラインラウンドテーブルディスカッション「こども・若者のメンタルヘルスへのソーシャルメディアの影響と、ソーシャルメディアの社会での活用の在り方」(2025年5月23日)
-
2025-05-07
【政策提言】フェローによる政策提言プラットフォームプロジェクト「日本における『医薬品の費用対効果評価』のより良い活用に向けて」(2025年5月7日)
-
2025-05-21
【申込受付中】第2回HGPIサロン2025:日本の社会保障の未来を見据えて「日本の医療費と皆保険制度の持続可能性」(2025年6月27日)