第4回朝食会「医療の質をどう改善するか」
日付:2006年5月11日

今回は、当機構理事の埴岡健一が「医療の質をどう改善するか」をテーマに講演させていただきました。
(要旨)
いま、日本の医療の質を測るための努力が強く求められている。それは医療の質に大きな格差があるという疑念が強まったことが理由である。アメリカでは「ペイ・フォー・パフォーマンス(P4P)」という動きも広がりつつある。日本においても、医療の質を測り、評価することを早急に議論し行動に移していかなければ、海外の動きについていけなくなるばかりか、日本の医療の現状は分からないまま、質はばらついたままになってしまう。
聖路加国際病院はこのほどQuality and Healthcare Report 2006をまとめた。ここでは医療の質を測る指標を60項目ほど抽出し、自分たちの位置を知ろうとしている。このような活動は日本では他になく評価すべきである。他の主要な病院も同様の指標を計測し、公表すればベンチマークとなるだろう。また、日本では、大学病院などで始まった臨床指標を集める試みも、指標が手術件数などの形式的なものが多く、生存率や標準的な手技の順守率などの実質的な指標は少ない。
米国の病院の医療の質開示レポートのモデルがダートマス・ヒチコック病院のやり方だ。200以上の臨床指標を米国の平均などと対比して表示している。米国ではそのプロセスを順守すればアウトカム(診療成績)が上がるというエビデンスやコンセンサスのある指標が網羅的に収集されている。また、義務的な指標提出や自主的な指標提出が広く行われていて全国平均などのデータもあるため、幅広く客観的な成績開示ができるわけだ。日本においてもこうした管理手法を議論し、開発し、実行していくべきである。
医療の質を測り、公開することによって成績の悪い施設が著しく改善することが期待できる。米国の医療現場では、臨床指標を計測して格差や自分の成績が見えるようになれば、目標の半分が達成するといわれていた。成績が見えるようになれば、改善の意欲をほぼ確実に生むことができるという意味だ。医療界や学会内で成績を集めてフィードバックするだけでなく、社会一般に対して各施設名を明らかにして成績を公表するパブリックレポーティングも重視されており、実例も増えている。そして、一般市民がこうした病院の成績をインターネットから検索して病院選択の参考にすることも可能となっていく。さらにアメリカの好悪的保険は、一部にペイ・フォー・パフォーマンス(P4P)を採用している。P4Pとは、測定・開示された医療の質に応じて診療報酬にボーナスやペナルティをつけることをいう。パブリックレポーティングよりもさらに質の向上を促進するのではないかという考えが米国にはある。
日本における医療の質の評価は、作業が進んでいないばかりか、理想のイメージもまだ創られていない。医療の質の向上と医療費削減のためには、例えば、予算の1%を常に医療全体の管理費として質の計測と開示に使うべきではないか。医療の質を測ることが求められているという社会の流れを、医療現場が認識し、職能集団としてのプロフェッショナリズムを発揮して、そうした動きを主導していくことが大切である。
(要旨)
いま、日本の医療の質を測るための努力が強く求められている。それは医療の質に大きな格差があるという疑念が強まったことが理由である。アメリカでは「ペイ・フォー・パフォーマンス(P4P)」という動きも広がりつつある。日本においても、医療の質を測り、評価することを早急に議論し行動に移していかなければ、海外の動きについていけなくなるばかりか、日本の医療の現状は分からないまま、質はばらついたままになってしまう。
聖路加国際病院はこのほどQuality and Healthcare Report 2006をまとめた。ここでは医療の質を測る指標を60項目ほど抽出し、自分たちの位置を知ろうとしている。このような活動は日本では他になく評価すべきである。他の主要な病院も同様の指標を計測し、公表すればベンチマークとなるだろう。また、日本では、大学病院などで始まった臨床指標を集める試みも、指標が手術件数などの形式的なものが多く、生存率や標準的な手技の順守率などの実質的な指標は少ない。
米国の病院の医療の質開示レポートのモデルがダートマス・ヒチコック病院のやり方だ。200以上の臨床指標を米国の平均などと対比して表示している。米国ではそのプロセスを順守すればアウトカム(診療成績)が上がるというエビデンスやコンセンサスのある指標が網羅的に収集されている。また、義務的な指標提出や自主的な指標提出が広く行われていて全国平均などのデータもあるため、幅広く客観的な成績開示ができるわけだ。日本においてもこうした管理手法を議論し、開発し、実行していくべきである。
医療の質を測り、公開することによって成績の悪い施設が著しく改善することが期待できる。米国の医療現場では、臨床指標を計測して格差や自分の成績が見えるようになれば、目標の半分が達成するといわれていた。成績が見えるようになれば、改善の意欲をほぼ確実に生むことができるという意味だ。医療界や学会内で成績を集めてフィードバックするだけでなく、社会一般に対して各施設名を明らかにして成績を公表するパブリックレポーティングも重視されており、実例も増えている。そして、一般市民がこうした病院の成績をインターネットから検索して病院選択の参考にすることも可能となっていく。さらにアメリカの好悪的保険は、一部にペイ・フォー・パフォーマンス(P4P)を採用している。P4Pとは、測定・開示された医療の質に応じて診療報酬にボーナスやペナルティをつけることをいう。パブリックレポーティングよりもさらに質の向上を促進するのではないかという考えが米国にはある。
日本における医療の質の評価は、作業が進んでいないばかりか、理想のイメージもまだ創られていない。医療の質の向上と医療費削減のためには、例えば、予算の1%を常に医療全体の管理費として質の計測と開示に使うべきではないか。医療の質を測ることが求められているという社会の流れを、医療現場が認識し、職能集団としてのプロフェッショナリズムを発揮して、そうした動きを主導していくことが大切である。
申込締切日:2006-05-10
開催日:2006-05-11
調査・提言ランキング
- 【当事者の声】薬剤耐性 伊東幸子氏 非結核性抗酸菌症(2022年3月18日)
- 【緊急提言】少子化時代における我が国の産科医療体制のあり方について(2023年9月15日)
- 【政策提言】「がんゲノム医療」への患者アクセスの改善に向けて(2023年8月10日)
- 【政策提言】プラネタリーヘルスの視点から考える2023年UHC政治宣言に対する期待(2023年9月8日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【調査報告】「社会経済的要因と女性の健康に関する調査提言」(2023年3月6日)
- 【調査報告】メンタルヘルスに関する世論調査(2022年8月12日)
- 【出版報告】「各都道府県における循環器病対策推進計画の展開と発展に向けて~課題と好事例から考える循環器病対策~」(2023年9月7日)
- 【お知らせ】パンデミック予防・備え・対応に関する国連ハイレベル会合におけるアクションを求める公開書簡に署名(2023年9月12日)
- 【お知らせ】「COP28開催まで100日:大気汚染を議題に盛り込むよう緊急要請する公開書簡」に署名(2023年9月4日)