「患者が求めるがん政策:わが国で整備すべき患者向け情報は何か」
日付:2005年7月5日

日本医療政策機構によるフォーラムの第二弾。今回は「患者主体の医療」プロジェクトの一環として「がんに関する患者向けの情報センター」について、有識者が報告及びディスカッションを行い、がん患者の声を医療政策に取り入れていくにあたっての課題と展望を討議しました。
わが国で整備すべき患者向け情報は何か。
注目を集めるがん政策の「情報」という具体的なテーマについて、患者会から直接意見を聞き、与野党および厚生労働省のがん政策担当者が議論するシンポジウムを開催。
まず、「がん情報センター」構想を作った三浦 捷一氏が、「がん患者にとって、情報は希望である。患者の希望となる情報を提供していく仕組みが早急に必要である」という力強い問題提起を行いました。
次に、当機構の近藤 正晃ジェームスが、がん関係者を対象に実施したアンケートから、患者が求めている情報の内容を具体的に示しました。埴岡 健一と祖父江 友孝氏は、がん情報の専門家として、情報の現状と課題を提示しました。
ハイライトは、がん患者会を代表して、加藤 久美子氏、會田 昭一郎氏、山崎 文昭氏が、立法・行政への政策提言を各々の言葉で語ったことでした。患者の声を踏まえ、仙谷 由人氏は「がん対策をマニフェストの争点に」という問題提起を行い、それに対して渡辺 孝男氏、鴨下 一郎氏が各党のがん政策について論じました。また、中谷 比呂樹氏は、厚生労働省のがん政策の展望を示しました。
最後に、当機構の黒川 清が、政府支出の中の医療の位置づけ、医療の中のがんの位置づけについて、優先順位の議論が必要であることを参加者と確認した。当日は、政治家、患者会の会員、メディアなど各界から多くの方々が参加しました。
■スピーカーの発言要旨
三浦 捷一氏: 「 がん患者にとって、情報は希望」
がんは病態等の個人差が大きく、また治療法が急速に進歩した結果、医師の知識が専門領域に特化しがちである。その結果、患者は自分の病状、最適な医師と治療法、適正な医療費を知るのが難しく、情報を求めてさまよっている。日本がん情報センター(JCIC) の設立により、情報の一元化、治療の相談などを可能にするべきだ。
近藤 正晃ジェームス: 「 患者の8割が現在のがん政策に不満」
がん関係者アンケートで明らかになった課題は、第一に、がん関係者の8 割ががん医療の現状に不満であること。(中間集計ベース)第二に、不満の原因は保険制度と患者向け情報の欠如にある。第三に、情報として特にニーズが高かったのは、専門医の有無と病院・医師ごとの疾病別の治療成績である。がん医療に関する情報提供機関については、すべての患者が必要と回答している。これをどう実現するかが討議の焦点である。
埴岡 健一: 「 センターの速やかな設立のための計画を」
患者が求める情報は多様であり、国が牽引役となって情報を広く提供していくことが必要。情報センターの実現に際しては、治療成績等のデータを集約し、検索可能な体制を短期集中的に整備することが重要。また、センターには患者団体と外部者が参加する企画管理委員会を置き、がん拠点病院には情報相談員を設置する。財源を確保して診療報酬や補助金などでインセンティブを与えることも必要だ。
祖父江 友孝氏: 「 死亡率・罹患率の減少、QOLの向上の正しい情報提供を」
国立がんセンターの情報研究部は、がん罹患率および死亡率の減少、がん患者とその家族の方のQOL(生活の質)向上の二点を目的としたWHO(世界保健機構)の国家的がん対策プログラムをモデルとして、予防、早期発見、診断、治療、緩和ケアについて証拠に基づいた戦略に取り組んでいる。がんの実態および有効性に関する証拠に基づいたがん対策を進め、目的の達成を評価する仕組み作りが求められている。
加藤 久美子氏: 「 がん患者は治療に直結する情報を求めている」
患者にとって、がん疾患の治療に関する、病院、医師、治療方法、治療薬、経済的な問題等の情報を集めることは非常に困難。疾患部位ごとの治療成績と共に、治療に直結する情報を患者は最も求めている。情報センターの設立は、開かれた場で議論を進めてほしい。
曾田 昭一郎氏: 「 日本がん情報センターの設立は急務」
日本がん情報センターの設立が急務である。第一に、がんの死亡率を低下させるには、情報を通じて治療環境を整備することが必要。第二に、患者団体が一体となれば具体的な政策提言が可能である。第三に、健康食品等で一部に見られる被害を防ぐ上でも、情報の共有が必要である。
山崎 文昭氏: 「 行政と患者の連携が必要」
患者にとって必要な情報は患者にしかわからない。また、一番肝心なのは情報センターを作ることだけでなく、その結果、国民や患者が満足し、医療をよくしていくことである。最初から患者の必要なものを組み込むために、患者と立法、行政が協働することが必要。政治家の方々のリーダーシップに期待する。
仙谷 由人氏: 「 がん対策をマニフェストの争点に」
自身の闘病体験を踏まえて、情報の曖昧さ、医療スタッフの地域格差を実感している。情報センターの設立や診療報酬の見直しも必要であろう。また世論ががん対策に向かえば、資金の投入も可能となる。がん対策をマニフェストの争点にすべきだ。内閣、文科相、厚労相らに働きかけていく。
渡辺 孝男氏: 「 予算確保のための、より大きな議論を」
患者中心の医療を考える上で、統一された正確な診療に至る情報が必要である。健康寿命を長くする施策が求められている。予防医学、代替医療など広い意味でのがん対策が必要であろう。そのための予算の確保には、がん対策プロジェクトチームとして努力したい。
鴨下 一郎氏: 「 がん対策への優先順位向上」
患者にとっては、役に立つ情報を一元化することは非常に意味のあることである。また、病気に関する時系列の俯瞰的な情報も重要となってくる。医学や科学の話が多くなりがちであるが、情報に関する戦略にシフトしていくことも重要ではないか。今後のがん対策は、優先順位を上げて実行すべく努力していきたい。
中谷 比呂樹氏: 「 情報センターで患者に希望を」
厚生労働省は、大臣を本部長とする「がん対策推進本部」を設けて、局の縦割りを排して、がん対策を充実強化しようとしている。その中で、がん医療の均てん化と情報の発信は大きな柱である。国立がんセンターでも、患者の視点を十分に踏まえた論議がなされている。情報センターに対する患者の期待は大きく、丁寧に対応したい。
黒川 清:「 医療全体の優先順位の中の位置づけを」
20 年後50 年後に世界で、そしてアジアでどのような国家でありたいかを考えて国の政策を実施すべきである。日本が世界一の高齢社会であることを踏まえ、国民が税金の使途として、どのような政策、そしてどのような医療を望むのかという視点を持たなければならない。
わが国で整備すべき患者向け情報は何か。
注目を集めるがん政策の「情報」という具体的なテーマについて、患者会から直接意見を聞き、与野党および厚生労働省のがん政策担当者が議論するシンポジウムを開催。
まず、「がん情報センター」構想を作った三浦 捷一氏が、「がん患者にとって、情報は希望である。患者の希望となる情報を提供していく仕組みが早急に必要である」という力強い問題提起を行いました。
次に、当機構の近藤 正晃ジェームスが、がん関係者を対象に実施したアンケートから、患者が求めている情報の内容を具体的に示しました。埴岡 健一と祖父江 友孝氏は、がん情報の専門家として、情報の現状と課題を提示しました。
ハイライトは、がん患者会を代表して、加藤 久美子氏、會田 昭一郎氏、山崎 文昭氏が、立法・行政への政策提言を各々の言葉で語ったことでした。患者の声を踏まえ、仙谷 由人氏は「がん対策をマニフェストの争点に」という問題提起を行い、それに対して渡辺 孝男氏、鴨下 一郎氏が各党のがん政策について論じました。また、中谷 比呂樹氏は、厚生労働省のがん政策の展望を示しました。
最後に、当機構の黒川 清が、政府支出の中の医療の位置づけ、医療の中のがんの位置づけについて、優先順位の議論が必要であることを参加者と確認した。当日は、政治家、患者会の会員、メディアなど各界から多くの方々が参加しました。
■スピーカーの発言要旨
三浦 捷一氏: 「 がん患者にとって、情報は希望」
がんは病態等の個人差が大きく、また治療法が急速に進歩した結果、医師の知識が専門領域に特化しがちである。その結果、患者は自分の病状、最適な医師と治療法、適正な医療費を知るのが難しく、情報を求めてさまよっている。日本がん情報センター(JCIC) の設立により、情報の一元化、治療の相談などを可能にするべきだ。
近藤 正晃ジェームス: 「 患者の8割が現在のがん政策に不満」
がん関係者アンケートで明らかになった課題は、第一に、がん関係者の8 割ががん医療の現状に不満であること。(中間集計ベース)第二に、不満の原因は保険制度と患者向け情報の欠如にある。第三に、情報として特にニーズが高かったのは、専門医の有無と病院・医師ごとの疾病別の治療成績である。がん医療に関する情報提供機関については、すべての患者が必要と回答している。これをどう実現するかが討議の焦点である。
埴岡 健一: 「 センターの速やかな設立のための計画を」
患者が求める情報は多様であり、国が牽引役となって情報を広く提供していくことが必要。情報センターの実現に際しては、治療成績等のデータを集約し、検索可能な体制を短期集中的に整備することが重要。また、センターには患者団体と外部者が参加する企画管理委員会を置き、がん拠点病院には情報相談員を設置する。財源を確保して診療報酬や補助金などでインセンティブを与えることも必要だ。
祖父江 友孝氏: 「 死亡率・罹患率の減少、QOLの向上の正しい情報提供を」
国立がんセンターの情報研究部は、がん罹患率および死亡率の減少、がん患者とその家族の方のQOL(生活の質)向上の二点を目的としたWHO(世界保健機構)の国家的がん対策プログラムをモデルとして、予防、早期発見、診断、治療、緩和ケアについて証拠に基づいた戦略に取り組んでいる。がんの実態および有効性に関する証拠に基づいたがん対策を進め、目的の達成を評価する仕組み作りが求められている。
加藤 久美子氏: 「 がん患者は治療に直結する情報を求めている」
患者にとって、がん疾患の治療に関する、病院、医師、治療方法、治療薬、経済的な問題等の情報を集めることは非常に困難。疾患部位ごとの治療成績と共に、治療に直結する情報を患者は最も求めている。情報センターの設立は、開かれた場で議論を進めてほしい。
曾田 昭一郎氏: 「 日本がん情報センターの設立は急務」
日本がん情報センターの設立が急務である。第一に、がんの死亡率を低下させるには、情報を通じて治療環境を整備することが必要。第二に、患者団体が一体となれば具体的な政策提言が可能である。第三に、健康食品等で一部に見られる被害を防ぐ上でも、情報の共有が必要である。
山崎 文昭氏: 「 行政と患者の連携が必要」
患者にとって必要な情報は患者にしかわからない。また、一番肝心なのは情報センターを作ることだけでなく、その結果、国民や患者が満足し、医療をよくしていくことである。最初から患者の必要なものを組み込むために、患者と立法、行政が協働することが必要。政治家の方々のリーダーシップに期待する。
仙谷 由人氏: 「 がん対策をマニフェストの争点に」
自身の闘病体験を踏まえて、情報の曖昧さ、医療スタッフの地域格差を実感している。情報センターの設立や診療報酬の見直しも必要であろう。また世論ががん対策に向かえば、資金の投入も可能となる。がん対策をマニフェストの争点にすべきだ。内閣、文科相、厚労相らに働きかけていく。
渡辺 孝男氏: 「 予算確保のための、より大きな議論を」
患者中心の医療を考える上で、統一された正確な診療に至る情報が必要である。健康寿命を長くする施策が求められている。予防医学、代替医療など広い意味でのがん対策が必要であろう。そのための予算の確保には、がん対策プロジェクトチームとして努力したい。
鴨下 一郎氏: 「 がん対策への優先順位向上」
患者にとっては、役に立つ情報を一元化することは非常に意味のあることである。また、病気に関する時系列の俯瞰的な情報も重要となってくる。医学や科学の話が多くなりがちであるが、情報に関する戦略にシフトしていくことも重要ではないか。今後のがん対策は、優先順位を上げて実行すべく努力していきたい。
中谷 比呂樹氏: 「 情報センターで患者に希望を」
厚生労働省は、大臣を本部長とする「がん対策推進本部」を設けて、局の縦割りを排して、がん対策を充実強化しようとしている。その中で、がん医療の均てん化と情報の発信は大きな柱である。国立がんセンターでも、患者の視点を十分に踏まえた論議がなされている。情報センターに対する患者の期待は大きく、丁寧に対応したい。
黒川 清:「 医療全体の優先順位の中の位置づけを」
20 年後50 年後に世界で、そしてアジアでどのような国家でありたいかを考えて国の政策を実施すべきである。日本が世界一の高齢社会であることを踏まえ、国民が税金の使途として、どのような政策、そしてどのような医療を望むのかという視点を持たなければならない。
申込締切日:2005-07-04
開催日:2005-07-05
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