
萩原 なつ子 氏(日本NPOセンター代表理事/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科 教授/HGPIメンタルヘルス政策プロジェクト アドバイザリーボードメンバー)
「障害を持つ人を社会全体で支えるための市民主体の政策を」
- 自己紹介及び現在のご活動
「市民研究コンクール」が原点
日本医療政策機構(HGPI)は、「市民主体の医療政策の実現」を目指していらっしゃいますね。私は、トヨタ財団の市民研究コンクール(1979-1997年、以下コンクール)「身近な環境を見つめよう」のプログラムオフィサーを務めていました(1989-1997)。これは、市民による身近な環境に関する研究に対し助成金を出すというおそらく日本で初めての助成プログラムです。
なぜ「市民」なのかというと、当時、トヨタ財団のプログラムオフィサーを務めていた山岡義典氏(現・日本NPOセンター顧問)が、「市民が自分たちの目で見て歩き、調査・研究を行い、エビデンスに基づいて地域の課題解決のための政策を提案する」というコンセプトを考え、実施されました。当時では、画期的な取り組みだったといえます。地域に住み続けている市民が責任感を持って地域を調査・研究する訳ですから、その問題に関してはある意味「専門家」といえます。それから、研究者の研究は、ともすれば、自身の研究業績のためのものになりかねないという傾向があります。ですが、そこに居住する住民、関わりの強い人々が中心となる研究は当事者性が強く、無責任なことはできません。たとえば阪神淡路大震災では、外部からやってきた研究者や専門家、ジャーナリストも含まれると思いますが、機械的にインタビューするなどして、被災者の心を傷つけてしまう、私の言葉で言えば「通りすがりの研究者」等の問題が指摘されました。その教訓を生かし、東日本大震災では、そのような行為を慎むよう通達が出されたと記憶しています。(HGPI補足:日本学術会議2013年3月28日提言「東日本大震災に係る学術調査―課題と今後について―」 )そもそも地域の課題の発見や解決の主体に、「専門家」「素人」という分類自体、意味のないことであることを私はプログラムを通して学びました。
もうひとつコンクールの活動を通して、私は大事なことを学ぶことができました。ある団体の代表を務める重度障害者の方とお話した際に、彼は「ベビーカーや車いすの方のことを考えると、町中をバリアフリーにすればいいと思うかもしれないけれども、それは違う。視覚障害の方にとっては、段差がない道ほど怖いものはない」というのです。なるほど、と思いましたね。その方は「同じ障害者でも、自分たちのことだけを考えていては駄目なのだ」と強調されていました。
では、何センチメートルの段差がいいのか、どんな点字ブロックが必要なのかは、当事者たちにしか分かりません。ですから、いろいろな当事者の方たちが参加し、対話しながら進めていくことが大事です。政策提言も同じだと思うのです。どのように市民が、当事者が関わっていけるのか、プロセスデザインが重要になります。
私の原点は、やはりこのコンクールですね。市民と地域社会を構成する多様なステークホルダーが対話し、調査・研究を通して繋がりながら問題を解決していく、普遍的なプロセスデザインを学べたと思います。
行政経験を生かし「としまF1会議」の座長を務める
その後、私は大学教員になったのですが、6年ほど経って当時の宮城県知事の浅野史郎氏の招聘で宮城県環境生活部の次長を務めました。2年間の期限付きでしたが、地方行政の経験から得たものも大きかったですね。例えば、市民からの政策提言は、行政の仕組みが分かっていなければ、タイミングを間違えてしまいます。消滅可能性都市と言われた豊島区の再生に向けて立ち上げた「としまF1会議」(以下、F1会議)が約8,800億円の事業化を実現できたのは、秋までに予算を提出し、2月の議会に間に合わせるというタイミングを逃さなかったことが、成功要因の1つといえます。
政策づくりは、多くの人々に開かれた中で進めることが大事です。精神障害を持つ人も、それぞれの視点を持っているはずですから、いかに多様な人たちの声を集められるかが肝だと思うのです。現状を可視化させていく仕掛け、仕組みを誰かがつくらなければなりません。あとは、どのタイミングで、どういうやり方で、どのような形で市民に関わってもらうかが重要です。「参加」したら、次は「参画」(企画)する側になってもらうことで、点から線へ、そして面へと広がっていきます。そして声を聞いて終わりではなく、少しずつであっても形にして、実現していくことが大切です。
F1会議では、ワールド・カフェ方式(※)で吸い上げた多くの意見をまとめ、行政と一緒に同じテーブルで議論しながら優先順位をつけ、提言しています。こうした方法は、現在「としま型」として政策形成に活用されています。豊島区は、誰にとっても暮らしやすい町へと変わってきました。
※ワールド・カフェ方式:一般的な会議とは異なり、リラックスした雰囲気を作り、特定のテーマに集中して会話をするための方法。互いの意見を否定することなく、相手の意見を尊重しながら新たな発見を得ることを目的に行う。4~5名の少人数で行い、定期的にメンバーの組み合わせを変えながら、会話を続ける。
孫がメープルシロップ尿症になったことで「当事者」を意識
私の孫は、2013年6月にメープルシロップ尿症という先天性代謝異常を抱えて生まれました。日本では64万人にひとりという難病で、必須アミノ酸を分解できないので母乳を含め、タンパク質を摂取することができません。生まれた当時はまだ難病指定されていなかったのですが、患者会で署名活動などに取り組んだ結果、2015年7月の法改正により、メープルシロップ尿症が指定難病の対象なったのです。(メープルシロップ尿症とは | MSUD-JAPAN)
私の娘は、患者会に参加して、同じメープルシロップ尿症の患者さんの元気な姿を見た時に、希望を持ったそうです。お互いに協力し合いながら生きている存在を見ることは、すごく大事だと思いましたね。
病気を受け入れるのは大変なことですが、私たちはオープンにして、知り合いの専門家などに積極的にアドバイスを求めていきました。周囲から前向きな励ましをもらえたことが、とてもよかったと思います。
ありのままを受け入れ、人と繋がることが大事
HGPI:どのような疾患でも、診断を受けて悩み苦しみ、心を閉じて外との関係性をつくれなければ、周囲の助けを得ることもできません。そこを乗り越えてオープンにすることで、いろいろな人と繋がり、協力を得られるようになる訳ですね。
萩原:病気を壁だと思うと乗り越えなければなりませんが、「ありのままの自分を受け入れられるかどうか」だと思うのです。おそらく幼少期からの教育も重要になりますね。人と繋がるには、「私を理解しようとしてくれている」「私の言っていることを受け入れてくれる」と感じることが大事だそうです。ですから、そう思える関係性をつくっていくことも必要でしょう。その媒介となる役割を果たす存在、それがNPOなのかもしれません。
- 政策提言『メンタルヘルス2020』を受けて
明るく繋がっていく
娘はメープルシロップ尿症という病名にちなんで、メープルシロップを扱う企業や団体へ積極的に協力を呼び掛けてきました。ほとんどノリでしたね。「お手紙をいただいたので」と連絡をくださった輸入企業の社長さんとの交流は、今でも続いています。このようにメンタルヘルスの取り組みも、できる限り明るく進めていってほしいと思います。あまり深刻だと、かかわる方もつらくなってしまいますよね。
「求援力」と「受援力」
日本人は、幼い頃から「誰にも迷惑をかけないように」と教育されているため、「求援力」つまり「助けてと言える力」「助けを求める力」が弱いのです。「いいえ、大丈夫です」ではなく、自分が何に困っていて、どういうことをして欲しいのかを相手に伝えることが重要です。また「受援力」(支援を受ける力)も大事ですね。防災分野でも多様な支援活動を受け入れる地域や個人の「受援力」の重要性が注目されています.「伝える」と言うことに関しては、「伝えるこつ」が大事です。日本NPOセンターは、電通と協働でNPOが活動を広げていくためのコミュニケーション力向上を支援するプログラム「伝えるコツ」のセミナーを16年ほど前から続けています。参考にしていただけると嬉しいです。(伝えるコツ | 日本NPOセンター)
- 精神疾患を持つ人の災害対策も今後の重要な視点
ケアラーに対する支援
東日本大震災では、「隠された障害者」の問題が指摘されました。障害を持つ家族の存在を周囲に隠して暮らしてきたため、避難所にも行けなかったとか、自主防災組織が障害者の存在を確認することができなかったという問題がありました。難病者を要支援者に入れている自治体も少ないと聞いています。
災害が起これば、精神疾患を持つ人は、更なる困難を抱えることになります。病状が悪化する中で、平時に支えてくれていた地元のNPOなども被災して弱体化することが想定されますので、障害者とケアをする家族等ケアラーへの支援も含めて一緒に考えていかなければなりません。平時の時から、当事者支援とともに、「ケアする人を支援する」ケアラー支援も含めた政策提言が必要だと思います。
障害を持つ人たちを可視化できる環境づくり
身体的なハンディを持っている障害者の方々と違って、精神障害者、内部障害者、近年増加傾向にある発達障害者の方々は、当事者あるいは関係者が声を上げなければ他者には分かりづらいものです。
とくに発達障害については、「発達障害」とひとくくりにできない複雑な問題を抱えていますので、当事者や関係者からの発信が重要だと思います。たとえばCOVID-19の影響で大学もオンライン授業が当たり前になっていますが、自閉症スペクトラム障害(ASD: Autism Spectrum Disorder)や注意欠如・多動性障害(ADHD: Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)といった発達障害の特性によってオンライン授業に「向き不向き」があるということが、私の勤務する立教大学のアンケート調査によって分かってきました。
大学における発達障害の学生に対する就労支援についても、私のゼミ生が修士論文執筆のために調査を実施しましたが、特性によってきめの細かい、寄り添い型の支援が求められていることがわかっています。近年、障害のあるなしにかかわらず、仕事に対する価値観や働き方が大きく変わろうとしています。例えば、職務ではなく組織への帰属を求め「メンバーシップ型雇用」から、それぞれの専門性や特性を活かした「ジョブ型雇用」への移行は日本でも進みつつあります。ある意味では障害者にとっては就労の機会が広がる可能性があるといえます。ですので、障害を抱える方々のそれぞれの特性や得意分野を生かせる「ジョブ型」の就労支援も広がっていくことでしょう。
当事者だから分かる「戦略的おせっかい」
障害を持つ人たちを可視化できる環境をつくっていくためには、お互いの存在を認め、何らかの役割を担えるような場、仕組み、仕掛けが必要です。ダイバーシティが進む社会において、その要請はますます高まっていくことでしょう。「お互いさま」の社会を創るにはちょっとしたお節介が必要だと思います。余計なお節介になってもこまりますので、節度ある介入をめざす、「戦略的お節介」が大事だと思っています。どの程度のお節介がいいのかなかなか難しいですが、私自身が孫の病気を通して当事者の立場になったことで、学びつつあります。
自分自身が、いつでも同じ立場になり得ることを自覚したリスクマネジメントも大切ですね。ウルリッヒ・ベックが「個人化」と言っているように、現代は企業や家族などの形が変わり、あらゆるリスクを個人が背負わなければならない状況におかれつつあります。「助けて」と言えない状況に陥っているのです。ですから、いざという時に「助けて」と言えたり、助けたりできる「ゆるやかな繋がり」をつくっておくことが重要です。ゆるやかなつながりを創る方法として、よく例として取り上げられるのがパリのアパルトマンから生まれたと言われている「隣人まつり」です。料理や飲み物を持ち寄っておしゃべりするというとってもシンプルな「お祭り」です。近所の人たちと気軽に出会える場を日常的に創ることによって、住民を、交流を通してつなぐ仕組みです。それが結果として、地域のセーフティネットの整備につながっているのでしょう。
制度の対象から外れた人への支援
制度ができると、必ずマージナル(marginal: 境界)が発生します。ですから制度をつくる時には、対象から外れてしまう人が必ず出てくることを忘れてはなりません。それを前提として、今より良いものをつくっていくしかない訳です。たとえば、難病指定に入る疾患もあれば、外れてしまう疾患もある。その外れてしまった人たちへの支援を考える必要があります。
メープルシロップ尿症の患者は一生涯を通じて、必須アミノ酸を除去した、特殊なミルクを飲む必要があります。企業の社会貢献として製造してくださっていますが、患者数が少なく製造コストがかさむため、1缶何万円もします。小児慢性特定疾患として18歳未満までの経済的補助がありましたが、難病に指定されたことで、ようやく18歳以降も経済的補助の対象となりました。難病指定されていない希少疾患の人たちをどのように応援していくかが、今後の課題だと思っています。
法律をつくることの重要性
「男女雇用機会均等法」が成立するためには10年以上の年月が必要でした。私は法律制定以前に就職活動をした世代です。四年制大学を卒業予定の女子学生にはほとんど就職試験を受ける機会すらありませんでした。ですから、法律ができた時は嬉しかったです。確かに罰則規定等がなかったので「ザル法」とも言われていました。しかし、作れるときに作っておかなければ前へ進まないのです。法律があれば、状況に応じて、改正していくことができます。実態にあった法律にするために改正を重ね、理想的な法律にしていくための政策提言が重要になってくる訳ですね。やはり法律をつくることの意味は大きいと思います。
インタビュー日付:12月4日 萩原氏研究室にて開催
メンタルヘルス政策プロジェクト インタビュー連載企画「当事者からみたメンタルヘルス政策」
日本医療政策機構では2004年の創設以来「市民主体の医療政策の実現」を掲げ、エビデンスに基づく市民主体の医療政策を実現すべく、中立的なシンクタンクとして、市民や当事者を含む幅広い国内外のマルチステークホルダーによる議論を喚起し、提言や発信をグローバルに進めていくことを目指し活動をしてまいりました。
2019年に開始したメンタルヘルス政策プロジェクトにおいても、当事者の皆様からのお知恵を頂きながら活動に取り組み、2020年7月には政策提言「メンタルヘルス2020 明日への提言~メンタルヘルス政策を考える5つの視点~」を公表しました。今後は、他のプロジェクトとも連携しながら、他疾患領域の当事者組織からの学びや海外の精神疾患の当事者組織との意見交換・相互交流などにより、当事者が今後のメンタルヘルス政策を主体的に考え、発信する場の創造を目指してまいります。
そうしたビジョンの一環として、今回当事者のインタビューを連載する企画をスタートさせます。前述の政策提言に対し当事者の視点からストレートなご意見を頂き、それらを日英で発信することで、日本の当事者が置かれている現状や彼らのQOLをさらに向上させるメンタルヘルス政策の実現に寄与したいと考えています。
■ 第1回:宇田川 健 氏 (認定NPO法人地域精神保健福祉機構 代表理事)
「縦断的研究の充実によりリカバリーの生理学的解明を」
■ 第2回:小幡 恭弘 氏(公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)事務局長)
「医療体制と地域社会の融和に向けて メンタルヘルスを国の政策の中心に」

このたび、特定非営利活動法人日本医療政策機構(東京都千代田区、代表理事:黒川 清)は、今後のさらなる活動の強化のため、2018年10月2日に開催された理事会において、津川 友介氏(カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA: University of California, Los Angeles)助教授)、堀田 聰子氏(慶應義塾大学大学院 健康マネジメント研究科 教授・研究科委員)、乗竹 亮治(当機構 事務局長)を理事に任命することと決定いたしました。なお乗竹 亮治は、引き続き当機構事務局長としてその任にあたります。
今回の人事異動について、当機構代表理事の黒川は次のようにコメントしています。
「勢いのある若手が活躍し、さらに世界に羽ばたいていく場として、これからもHGPIは活動の幅を広げていきたい。皆さまからの引き続きのご支援をお願いしたい。」
新体制のもと、今後もさらに活動をさらに強化して参ります。引き続き当機構をご支援頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。
■役員一覧(2018年10月3日)
- 代表理事 黒川 清
- 副代表理事 吉田 裕明
- 理事 小野崎 耕平
- 理事 津川 友介
- 理事 永井 良三
- 理事 乗竹 亮治
- 理事 堀田 聰子
- 理事 武藤 真祐
- 監事 大 毅
- 監事 前川 健嗣
※下線は新任
※事務局長である乗竹以外の役員は非常勤・無報酬

*****最終報告書を作成し、発表しました。(2018年9月3日)
詳しくは、本ページの末尾のPDFファイルをご覧ください。
2018年5月29日(火)、日本医療政策機構は、「市民社会のためのNCDグローバルフォーラム 糖尿病セッション『患者リーダーなどによるワークショップの部』『フォーラムの部』」を開催いたしました。
心疾患、がん、糖尿病、慢性肺疾患などに代表されるNCDs(Non-Communicable Diseases:非感染性疾患)は、世界で主要な健康課題となっており、WHOの統計によると、2015年には、世界で3950万人がNCDsに起因し死亡し、その数は全死因の約70%にのぼっています。また、それらの死亡の4分の3は、低所得および中所得国で発生しており、喫緊のグローバルヘルス課題でもあります。
日本を含む先進国においても;
- NCDsの増加による疾病構造の変化に、保健医療システムが対応しきれていない(例:NCDsの増加は、患者さんや当事者の自主的な疾病管理の必要性や、日常生活のなかで疾病と向き合う機会の増大を生み、より一層、患者さんや当事者の声が届く制度設計の仕組みづくりが必要)
- NCDsでも、画期的な新薬や医療機器が創出されつつあるが、医療費の抑制も同時に求められており、イノベーションと医療システムの両立や維持が必要
- NCDs分野でのイノベーションの状況、医療システム全般への理解などについて、価値を共有・発信できる市民社会リーダーが、より一層必要
- NCDsが、低中所得国で多く発生しているグローバルヘルス課題であるという認識の周知が必要(例:先進国での課題解決や教訓の事例の共有、先進国による低中所得国支援への具体的な支援が求められている)
といったニーズが散見されています。
このようななか、国際的にも、NCDs対策を促進するモメンタムは高まりを見せています。2009年に設立され、約2,000の市民団体や学術団体が参画し、約170か国に展開する協働プラットフォームであるNCD Allianceの呼びかけもあり、2018年9月には、国連総会においてNCDsをテーマとしたハイレベル会合が、2014年以来に開催されます(日本医療政策機構は、NCD Allianceの日本窓口として登録されており、このモメンタムを推進しています)。
NCDsを取り巻く課題や現状に対峙すべく、日本医療政策機構では、NCDsの各疾病領域において、患者さんや当事者目線から各疾病における政策課題を抽出し、求められる政策を提言することが重要だと考えています。そのため、国内外の患者さんや当事者を含めた産官学民がフラットに結集し議論を重ねるグローバルフォーラムを開催することとなりました。
今回の第1回では、関係団体の協力のもと、糖尿病をテーマとし、患者さんや当事者目線から政策課題を抽出するために、グローバルフォーラム開催前の午前には、患者・当事者リーダー向けのワークショップ・意見交換会を開催致しました。
■患者リーダーなどによるワークショップの部
共催:
特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI)
特定非営利活動法人 患者スピーカーバンク (KSB)
特定非営利活動法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会(J-CDSMA)
米国 Partnership to Fight Chronic Disease(PFCD、慢性疾患対策パートナーシップ)
参加者:
患者リーダー、次世代患者リーダー、海外患者リーダー、アカデミア、産業界など
ワークショップでは「患者の課題を起点にマルチステークホルダーで考える糖尿病政策の次なる打ち手」と題し、活発な議論が交わされました。
■フォーラムの部
開会の辞(ビデオメッセージ)
黒川 清(日本医療政策機構 代表理事)
患者リーダーによるワークショップ・意見交換会 レポート
武田 飛呂城(特定非営利活動法人 日本慢性疾患セルフマネジメント協会 (J-CDSMA) 事務局長)
基調講演1「厚生労働省の糖尿病対策について」
相原 允一(厚生労働省 健康局 健康課 課長補佐)
基調講演2「日本における糖尿病ケアと政策的課題」
植木 浩二郎(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センター長)
スペシャルセッション「糖尿病をはじめとする非感染症疾患に対する国際協力」
ケニス トープ(米国 Partnership to Fight Chronic Disease (PFCD) (慢性疾患対策パートナーシップ)代表理事)
パネルディスカッション
「コミュニティにおける患者中心の糖尿病ケア・マネジメントの国際的潮流と展望」
パネリスト:
植木 浩二郎
オーレ ムルスコウ ベック(ノボノルディスクファーマ株式会社 代表取締役社長)
クリスティーナ パーソンズ ペレス(NCD Alliance能力開発ディレクター)
ケニス トープ
能勢 健介(任意患者団体 MYSTAR-JAPAN 共同代表)
山﨑 優介(広島市立安佐市民病院 看護師)
モデレーター:
乗竹 亮治(日本医療政策機構 事務局長)
(順不同・敬称略)
(写真:井澤 一憲)

2018年4月26日から5月8日にかけてスリランカで行われたPacific Partnership (PP) 2018に、日本医療政策機構よりアドジャンクトフェローであり医師の高松優光が参加しました。PPは、アメリカ海軍主導の国際災害救援活動訓練であり、防衛省 自衛隊、イギリス軍、オーストラリア軍などに加えて、NGOも参画しています。
PP2018では、スリランカ北部のトリンコマリーに米海軍病院船マーシーが停泊し、多国籍医療チームにて内科・歯科診療、船内手術、公衆衛生教育が行われました。日本からは約30名の自衛官に加えて10名の医療者がNGOから参加しました。
また、当機構は防衛省、スリランカ・アメリカ海軍と協力し、トリンコマリーの地域病院にAEDを寄付しました。贈呈式には、トリンコマリー地区保健所長をはじめとし、地域病院長、スリランカ・米海軍士官・防衛省士官、当機構事務局長の乗竹が参列しました。日スリランカの若手医療者によるAED使用のデモンストレーションも行われ、現場レベルでも官民連携を推進することに貢献しました。国内外で機運が高まっている官民連携を、当機構はグローバルヘルス分野においても推進していきます。

*****報告書を作成し、発表しました。
詳しくは、本ページの末尾のPDFファイルをご覧ください。
日本医療政策機構は、「プレ会合:医療システムの持続可能性とイノベーションの両立 シリーズ~試行的導入から見えてきた費用対効果評価導入への課題~」を開催いたしました。
イノベーションと持続可能な保健医療を実現するための、効率的・効果的な医療制度の構築は、日本のみならず世界共通の課題です。医療を適切に評価するための取り組みが各国でなされており、例えば、医療技術評価(HTA: Health Technology Assessment)によって、医療資源の適切な配分が可能になると期待する声もあります。わが国でも、中央社会保険医療協議会(中医協)費用対効果評価専門部会で、2012年度からHTA導入に向けて議論が重ねられてきました。2017年度には、費用対効果評価の試行的導入が実施され、2018年度も、今後の本格的導入に向けて、引き続き検討が重ねられる予定となっています。
当機構は、当政策分野における公論を促進し広く社会に貢献すべく、マルチステークホルダー結集型の産官学民がフラットに集結し議論を重ねる【「イノベーションと持続可能な医療システム」の両立に向けた連続フォーラム】を企画いたしました。
本プレ会合では、2018年度の本シリーズキックオフとして、当機構が2017年に開催したグローバル専門家会合で抽出された論点、そして2017年度における費用対効果評価の試行的導入から浮かび上がった課題や教訓、好事例、その後の各種会議体で議論された論点などを再確認し、今後2018年度の連続フォーラムで取り組むべき優先課題を整理しました。
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主催:特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)
参加者:政策立案者、関連省庁関係者、学識関係者、企業関係者など
開会(趣旨説明)
- 菅原 丈二 (日本医療政策機構 アソシエイト)
ラウンドテーブル「連続フォーラムで議論すべきテーマやアジェンダについての議論」
ラウンドテーブル登壇者:(五十音順・敬称略)
- 赤沢 学 (明治薬科大学 公衆衛生・疫学研究室 教授)
- 天野 慎介 (一般社団法人 全国がん患者団体連合会 理事長)
- 五十嵐 中 (東京大学大学院 薬学系研究科 医薬政策学 特任准教授)
- 市川 衛 (日本放送協会(NHK) 制作局 第1制作センター 科学・環境番組部 チーフ・ディレクター)
- 今村 聡 (日本医師会 副会長)
- 印南 一路 (慶應義塾大学 総合政策学部 教授)
- 大西 佳恵 (クリエイティブ・スーティカル株式会社 日本代表)
- 加藤 幸輔 (エドワーズ ライフサイエンス株式会社 代表取締役社長)
- 河野 圭志 (中外製薬株式会社 上席執行役員 渉外調査・グローバルヘルスポリシー担当)
- 小谷 秀仁 (PHCホールディングス株式会社 代表取締役社長)
- 後藤 悌 (国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)
- 古元 重和 (厚生労働省 保険局 医療課企画官)
- 齋藤 信也 (岡山大学大学院 保健学研究科 教授)
- 齋藤 直一 (ヤンセンファーマ株式会社 インテグレイテッド・マーケットアクセス本部 ポリシーインテリジェンス部 部長)
- 坂巻 弘之 (東京理科大学 経営学部 経営学科 教授)
- 田倉 智之 (東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座 特任教授)
- 田村 誠 (一般社団法人 医療システムプランニング 代表理事)
- 長瀬 敏雄 (ギリアド・サイエンシズ株式会社 ガバメント・アフェアーズ ディレクター)
- 二木 立 (日本福祉大学 相談役・名誉教授)
- 眞島 喜幸 (特定非営利活動法人 パンキャンジャパン 理事長)
モデレーター:
- 乗竹 亮治 (日本医療政策機構 事務局長)
- 近藤 由衣子(日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
本プレ会合を受けて、今後、連続フォーラムを開催いたします。

日本医療政策機構は、「高齢化とヘルス・イノベーション」をテーマに2018年グローバルヘルス・エデュケーション・プログラムをタイのマヒドン大学公衆衛生学部(Faculty of Public Health of Mahidol University)と共催いたします。
本プログラムの申し込み受付は締め切りました。
プログラム概要:G-HEP 2018
本年度は、高齢化にともなう健康課題に着目し、日本とタイの学生・若手人材が共通の課題に対して知見を共有し、互いに学び合うことを目的とします。最終課題として、高齢化にともなう非感染性疾患への対策などについて、タイと日本の参加者で構成されたグループにより、革新的な政策またはビジネス提案を競います。このプログラムを通じて、未来のグローバルヘルスにおけるリーダーとして個人の役割や責任について考えることを目指します。
本プログラムは、日本と海外をつなぐ次世代のグローバルヘルス・リーダーの養成を目指しているため、基本的に英語で行われます。日常会話レベルの英語力を有する方は、奮ってご応募下さい!
参加をご希望される方は、[ 2018年6月27日(水)17:00 ]までに、こちらの申し込みフォームより必要事項を記入のうえ、お申し込みください。
(締め切を延長いたしました。)
実施要項(詳細)
- 開催期間
2018年8月25日(金)~ 9月2日(日) 9日間(東京1日間、バンコク8日間) - 開催場所
東京:グローバルビジネスハブ東京・イベントスペース(当機構オフィス)
バンコク:マヒドン大学および関連施設(現地の医療施設等)、バンコク郊外のフィールド - プログラム内容
- グローバルヘルスに関する専門家・有識者による講義
- タイにおけるフィールドワーク
- 日本およびタイからの参加者によるグループワーク
- 課題解決のためのビジネス・政策コンペティション
- スケジュール(予定)
タイでは下記を実施予定です。
1)バンコク市内にある医療センターや介護施設を視察し、タイにおける最先端の高齢化対策について学ぶ
2)バンコクより車で3時間程度のナコーンラーチャシーマー県(Nakhon Ratchasima Province)にある病院や診療所、医療センター等を訪問
※対象地域における高齢化、非感染性疾患(NCDs)、認知症対策のための先進的な取り組みからタイの伝統医療の活用まで、コミュニティレベル、リージョナルレベルでの活動を視察するとともに、NCDs対策へのコミュニティエンゲージメントや、地域の医療センターで高齢者のためのヘルスプロモーションの取り組みを行っている現場の方々との意見交換等も実施予定です。場所 日数 日程 概要 東京 1 8月25日(土) オリエンテーション、アイスブレーカー・セッション バンコク、
バンコク郊外2 8月26日(日) バンコクへ渡航 3 8月27日(月) オリエンテーション、講義、グループワーク、
ウェルカムディナー4 8月28日(火) 講義、グループワーク 5 8月29日(水) フィールド実習 6 8月30日(木) フィールド実習 7 8月31日(金) フィールド実習 8 9月1日(土) グループワーク 9 9月2日(日) 最終プレゼンテーション、レセプション、帰国 - 参加者数
募集人数:最大15名(他にタイの参加者が参加します)
- 応募資格
※講義やフィールドワークで使用する言語は英語のため、日常会話レベル以上の一定の英語力が求められます。
※過去に、当機構主催のグローバルヘルス・サマープログラム(GHSP: Global Health Summer Program)、グローバルヘルス・エデュケーション・プログラム(G-HEP)に参加した方は、応募できません。
- 大学、大学院に所属する学生のうち、医学、公共政策、国際関係、公衆衛生、国際保健を専攻する方、あるいは他専攻の学生で国際保健分野に興味を持っている方(留学生、海外の大学/大学院に所属する学生も歓迎)
- 上記と同様の実務経験を有する若手人材(研究者や社会人)
- 選考
選考は、書類審査により行われます。応募フォーム(日本語、英語のどちらでも構いません)を提出いただき、英語能力と設問への回答をもとに選考いたします。 - 申込締切
2018年6月27日(水)17:00 - 選考結果
2018年6月29日(金)にメールにてお知らせいたします。 - 参加費
85,000円 (書類審査通過によりプログラム参加が決定した方は、2018年7月末までに振込をお願いします。期日は別途連絡。)参加確定後の辞退の場合は、キャンセル料が発生しますので、予めご了承下さい。 - 参加費に含まれる費用
- 東京・バンコクの往復渡航費
- フィールドワーク費用(宿泊費、タイ国内における交通費、食費*)
*ウェルカムディナー・レセプションなどの会食、タイ滞在中の朝食のみ。
- 参加費に含まれない費用
- 海外旅行保険費
- ビザ取得費
- 自宅または宿泊地から空港までの往復交通費*
- 東京での交通費
- 東京での昼食を除く食費
- バンコクフィールドワーク中の昼食・夕食の一部
- 土産代等の個人的支出に係る費用
- 海外旅行保険
旅行保険への加入を必須とします。海外旅行保険の平均費用は1万円以下です。
合格者には追って旅行保険の情報をお送りします。 - ビザ取得
タイ渡航において、国籍によってはビザが必要となります。参加者は各自責任もって、渡航までにビザを取得してください。ビザ取得に1か月以上かかる場合がありますので、選考結果通知後すみやかに手続きをお願いいたします。なお、日本のパスポートをお持ちの参加者は、本研修に際しては、ビザ取得は不要です。 - 交通・宿泊費の補助*
東京、神奈川、千葉、埼玉以外にお住まいの参加者には、自宅から東京までの交通費(往復)とホテル代補助が可能な場合があります。該当する応募者は、申請書類に現在の住所、補助の必要性を記載してください(東京、神奈川、千葉、埼玉にお住まいの参加者には適用されませんので、予めご了承ください。)
共催
特定非営利活動法人日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)
マヒドン大学公衆衛生学部
神奈川県立保健福祉大学
政策研究大学院大学(GRIPS)
お問合せ
特定非営利活動法人 日本医療政策機構
info@hgpi.org(担当:菅原、ナエル)

世界保健機関(WHO: World Health Organization)のNCDs(Non-Communicable Diseases:非感染症疾患)に関するハイレベル・グローバル委員会は、持続可能な開発目標の目標3.4*の達成に向けた提言書(“Time to deliver: Report of the WHO Independent High-Level Commission on Noncommunicable Disease”)を6月1日に公表しました。WHOの提言書を受けて、約2,000の市民団体や学術団体が参画し、約170か国に展開する協働プラットフォームであるNCD Allianceと200を超える市民団体による共同声明(”Time to Deliver in 2018: Bolder Commitments and Action Needed to Reverse the Tide of Noncommunicable Diseases and Mental Health Disorders”)が発出されました。日本医療政策機構もこの共同声明に署名したことをお知らせいたします。
NCDsの予防と管理における課題や現状に対峙すべく、当機構はNCD Alliance の日本窓口として、NCDs対策を促進するモメンタムの推進を継続してまいります。
詳細はこちらからご確認ください。
*2030年までに、NCDsによる早期死亡を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。

当機構シニアアソシエイト 今村優子が、金沢で行われた第74回日本助産師学会にて、「働く女性のヘルスリテラシーと健康行動や労働生産性に関する横断研究」と題し、ポスター発表を行いました。
本発表は、当機構が2018年3月に発表しました「働く女性の健康増進調査2018」における調査結果を用いました。