【開催報告】第5回HGPIサロン2025-2026:日本の社会保障の未来を見据えて「令和の時代に考える、社会における医療の価値」(2026年6月29日)
日本医療政策機構(HGPI)は、非営利・独立・超党派の民間シンクタンクとして、医療・社会保障の課題に取り組んできました。当機構は多様なステークホルダーの集合知を活かして、社会に新たな選択肢を提示することで市民主体の医療政策の実現を目指しています。
現在、日本の社会保障制度は急速な高齢化と生産年齢人口の減少という構造的な課題に直面しています。後期高齢者の増加に伴う医療介護サービスの需要拡大により、社会保障給付費は2040年までに190兆円に達すると予測され、これに生産年齢人口の減少による労働力不足が重なり、現役世代の負担増大と制度の持続可能性の危機をもたらしています。一方で、政府や民間の有識者の中では、これらの課題を克服するための前向きな取り組みが進展しています。医療・介護分野では技術革新が加速しており、新たなサービスやシステムイノベーションが生まれつつあります。また、共生社会の実現を目指した政策や活動が全国各地で展開されるなど、希望ある動きが広がっています。こうした取り組みは、日本の医療介護産業を成長産業としてさらなる発展に導くとともに、地域社会の活性化にも寄与する可能性を秘めています。
過去には社会保障制度改革国民会議が2012年に設置され、長期的な視点で社会保障制度の持続可能性や成長の方向性を議論しました。この議論は、「自助・共助・公助」の最適なバランスを探りつつ、社会保障制度の充実と効率化を追求する中で、日本の社会保障政策の土台を築きました。現在は、その流れを受け継ぎ、全世代型社会保障構築会議が開催され、さらに前進する議論が行われています。さらに、厚生労働省は2024年に「近未来健康活躍社会戦略」を公表し、持続可能な社会保障制度の構築に向けた具体的なビジョンを示しています。この戦略では、「医療・介護産業の成長促進」「国民への還元を目指したイノベーション活用」「健康活躍社会の実現」を主要目標として掲げています。
このような変化の兆しを背景に、2025年に実施した「HGPIサロン2025」を通じて、未来に向けた議論の場を提供してきました。チャタムハウスルールの下、参加者同士が自由かつ率直に対話を行い、政策形成のための洞察やアイデアが創出され活発な意見交換が行われました。2026年は、HGPIサロン2025で議論された内容をさらに広げるべく、「HGPIサロン2025-2026」として展開いたします。移り行く社会情勢における医療の価値や次世代の医療を見据えた議論、また今一度感染症対策から医療政策の課題を掘り下げることに焦点を当て、そしてこれらを総括として、当機構のミッションである市民主体の医療政策の実現を見つめなおします。
HGPIサロンは、医療・社会保障における課題を共有しながら、未来を見据えた解決策を共に探求する明るい場です。本企画で得られた収入は、運営費を賄うための会場費等に限定して使用されておりますが、個人賛助会員の皆様には無料でご参加いただけます。ぜひこの機会にご参加いただき、私たちとともに日本の社会保障の明るい未来を描いていただければ幸いです。
第5回となる今回は、当機構フェローの五十嵐中およびシニアアソシエイトの大河明咲子が、参加者の皆さまとともに議論を行いました。五十嵐からは、高額療養費制度の見直しをめぐる政策動向や、「破滅的医療費支出」という概念を用いた所得区分別の医療費負担の実態分析、OTC類似薬の保険給付見直しをめぐる諸課題、職域における予防・健康づくりの推進、そして医療における価値の多面性についてのプレゼンテーションがありました。また、質調整生存年( QALY: Quality-Adjusted Life Year )や経済毒性(Financial Toxicity)といった指標を通じた医療の価値の多面的な捉え方や、限られた財源の中で何を優先し何を見直すべきかという現場での課題についても取り上げられ、費用対効果をはじめとする定量的な指標だけでは測りきれない要素をいかに意思決定に組み込んでいくかについて、会場全体で活発な議論が交わされました。
【開催概要】
- 第5回登壇者
ゲスト:五十嵐 中(日本医療政策機構 フェロー)
モデレーター:大河 明咲子(日本医療政策機構 シニアアソシエイト) - 日時:2026年6月29日(月)18:30-20:30
- 形式:対面のみ
- 会場:国際文化会館(〒106-0032 東京都港区六本木5-11-16)
- ルール:チャタムハウスルール
- 言語:日本語のみ
- 参加費:個人賛助会員・学部生:無料
一般:4,400円(クレジットカード決済のみ)
※会場では軽食を提供させていただき、参加費は軽食・会場運営費に全額当てられました。
【プログラム】
| 18:30-18:35 | オープニング 日本医療政策機構 HGPIサロン事務局 |
![]() |
| 18:35-18:40 | 開会あいさつ 塚本 正太郎(日本医療政策機構 マネージャー) |
![]() |
| 18:40-20:00 |
クロスセッション *プレゼンテーションと会場を交えたインタラクティブな意見交換 テーマ「日本の社会保障の未来を見据えて“イマ”を考える」 ゲスト:五十嵐 中(日本医療政策機構 フェロー)モデレーター:大河 明咲子(日本医療政策機構 シニアアソシエイト) |
|
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
|
| 20:00-20:30 | レセプション | |
■プロフィール
五十嵐 中(日本医療政策機構 フェロー)
慶応義塾大学 経営管理研究科 特任准教授、横浜市立大学医学群データサイエンス研究科 客員准教授。2002年東京大学薬学部薬学科卒業、2008年東京大学大学院薬学系研究科博士後期課程修了、2008年から東京大学大学院薬学系研究科特任助教、特任准教授、2019年より横浜市立大学医学群健康社会医学ユニット准教授を経て、2024年より現職。専門は薬剤経済学。 医療経済ガイドラインの作成・個別の医療技術の費用対効果評価・QOL 評価指標の構築など、多方面から意思決定の助けとなるデータの構築を続けてきた。著書に、「医療統計わかりません (東京図書, 2010)」「わかってきたかも医療統計 (東京図書, 2012)」「薬剤経済わかりません (東京図書, 2014)」などがある。
大河 明咲子(日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
管理栄養士、公衆衛生学修士(専門職)。中村学園大学短期大学部食物栄養学科、中村学園大学栄養科学部を卒業後、長崎大学病院に入職し管理栄養士として給食管理、栄養管理、栄養指導業務等に従事。その間に小児糖尿病のサマーキャンプなど患者会のイベントにボランティアスタッフとして参加。その後、慢性期病院にて栄養部門の責任者を経験。2021年に東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻に進学し、臨床疫学の研究に取り組む。2022年に大学院修了後、京都大学医学部附属病院に管理栄養士として勤務。2024年2月より日本医療政策機構に参画し、非感染性疾患(NCDs: Non-Communicable Disease)、薬価・創薬・安定供給のプロジェクトなどを担当。
調査・提言ランキング
- 【政策提言】「研究開発への患者・市民参画(PPI)の実効性ある推進に向けて―疾患横断・省庁横断の体制整備に期待する―」(2026年6月30日)
- 【政策提言】共同声明「地球と人の健康を同時に守る~気候危機を健康・経済・成長の『機会』に変える日本型プラネタリーヘルス戦略~」(2026年6月24日)
- 【政策提言】薬剤耐性(AMR)対策の更なる推進に向けて(2026年7月15日)
- 【調査報告】CKD 診療における診療科間連携の実態と課題把握のためのヒアリング調査(2026年6月30日)
- 【調査報告】2025年 日本の医療に関する世論調査(2025年3月17日)
- 【調査報告】医療機関の省エネ・温室効果ガス排出削減事例集― 施設更新(新築・建て替え)に伴う実践事例 ―(2026年3月16日)
- 【調査報告】「働く女性の健康増進に関する調査2018(最終報告)」
- 【活動報告】研究開発への患者・市民参画(PPI)に関する提言を提出(2026年6月30日)
- 【政策提言】認知症プロジェクト「認知症の人をケアする家族等を取り巻く認知症施策のこれから」(2026年4月27日)
- 【政策提言】ワンヘルス時代を支える獣医学分野の疫学教育の在り方(2026年6月19日)











