
新型コロナウイルス感染症(COVID-19: Coronavirus Disease 2019)世界的感染拡大は、持続可能な開発目標(SDGs: Sustainable Development Goals)に盛り込まれているユニバーサル・ヘルス・カバレッジ[1](UHC: Universal Health Coverage)に対して、さらなる期待と課題を明らかにしました。
英国が中心となって2007年に立ち上げた、保健システム強化のための調整パートナーシップである「国際保健パートナーシップ・プラス」(IHP+: International Health Partnership +)を改編する形で、UHC2030[2]が2016年に発足しました。これは、日本が議長国としてリードした「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」において、SDGsゴール3の中心であるUHC達成に向けた取り組みへの機運が高まったことが背景にあります。UHC2030は、各国の元首脳らで人道問題を中心とした世界的な課題について取り組んでいる「エルダーズ(The Elders)[3]」、世界有数の慈善活動団体である「ビル&メリンダ・ゲイツ財団[4]」、そして1920年に英国に設立され、チャタムハウスとしても知られている「王立国際問題研究所[5]」などグローバルなネットワークとも連携しながら提言を発表しています。また、UHC2030の事務局である「コア・チーム」が、経済協力開発機構(OECD: Organisation for Economic Co-operation and Development)、世界銀行(WBG: The World Bank Group)、世界保健機関(WHO: World Health Organization)だけでなく市民社会、民間団体、そして各国の政治家、アカデミアなどにも働きかけています。日本にとってもUHCの達成は依然として国際保健外交分野の中心的な目標であり、UHC2030への支援やコミットメントを通じたマルチステークホルダーでの連携枠組みの強化や議論の促進に寄与しています。
現在、COVID-19をきっかけに、国際社会ではまさにUHCの達成、強化による保健システムの平時から有事を想定した備えの重要性が再認識されています。一方で、この危機下において各国が誤った道を歩まぬよう、UHC2030の共同議長は、2020年3月26日に「新型コロナウイルス感染症の危機に直面し、世界の指導者はUHCのコミットメントを 心に留めておくことが極めて重要」[6]という内容のメッセージを発表し、各国の政治指導者に対して、下記の7つの課題に対する配慮を求めました。
- 保健分野の域を超えた政治的リーダーシップの確保
- 誰ひとり取り残さない
- 規制強化と立法化
- ケアの質を維持
- より多くの投資と、より賢い投資
- 共に歩む
- ジェンダーに公平な対応の確保
UHC2030は、このようにコロナ禍の克服とともに2030年のUHC達成に向けた歩みを止めないよう、そして、次なるパンデミックへ対応した形でのUHCの実現に向けたUHCコミットメント状況の追跡も2020年から実施しています(2020年報告書及び各国のプロファイル)。
日本は、1961年にすべての国民を対象とする国民皆保険制度を導入し60年目の節目を迎えます。国内における取り組みが国際社会に影響を与えるとともに、今後は国際社会における取り組みを参考にした国内の取り組みの見直しが求められる場面も増加するかもしれません。今回は、UHCという取り組みを通じ、そのコア・チームのメンバーでもあり、UHC2030の立ち上げから中心的な役割を担っている事務局の渡部明人氏をお招きし、現在のお取り組みのご紹介とUHCを取り巻く現状や今後の展望、日本社会に求められる取り組みなどについて語っていただきます。
■お申込:
ご登録はこちら
■スピーカー:
渡部 明人 氏(UHC 2030事務局)
■日時:
2021年3月19日(金)18:30-19:45
■参加方法:
Zoomウェビナー形式
ご登録はこちら
■参加費:
無料
■定員:
500名
■プロフィール:
渡部 明人 氏(UHC 2030事務局)
北里大学医学部卒業後、国立国際医療センター医師、青年海外協力隊でバヌアツ共和国にて保健省健康増進政策担当の公衆衛生医師として勤務。ロンドン大学大学院にて、医療経済学や保健財政学を学ぶ。その後、外務省国際保健政策室の任期付職員として、日本が二国間援助・国連外交においてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進を主導するための調整業務等を担当する。2015年に保健財政官(JPO)としてWHOに入り、G7伊勢志摩サミットで日本が立上げをリードしWHOと世界銀行が共同で事務局を運営する、官民公連携パートナーシップであるUHC2030の職員として採用される。現在は、各国にUHCを広めていくための啓発・知見共有・国連UHCハイレベル会合・国連UHCの日・UHCムーブメント政治諮問委員会・UHCコミットメント達成に向けた説明責任等の業務に従事している。健康増進・予防財政に関する政策比較研究により博士号を所得。社会医学系専門医・指導医。
[1] UHCとは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し、持続可能な開発目標(SDGs)においてもゴール3(健康と福祉)の中でUHCの達成が掲げられている。
[2] UHC2030 – Accelerating progress towards Universal Health Coverage
[3] The Elders
[4] Bill & Melinda Gates Foundation
[5] Chatham House – International Affairs Think Tank
[6] Faced by the COVID-19 crisis, it is crucial that world leaders remember their universal health coverage commitments – UHC2030

日本医療政策機構 COVID-19政策アジェンダシリーズ 第一弾
グローバル専門家会合
~国際大規模イベント再開を見据えたあるべき打ち手と国際連携~
2021年1月時点において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、全世界で約200万人の命を奪うとともに、世界的な経済および社会の混乱を引き起こしています。その終息に向けて、有効な治療方法の確立、感染拡大防止に向けた検査体制の拡充やサーベイランスの実装、有効で安全なワクチンの開発と普及など、全世界において多様な施策が実行されつつあります。
我が国においても、2020年2月のダイヤモンド・プリンセス号における着岸検疫から始まり、初期クラスター対策、緊急事態宣言の発令など、未曽有のパンデミックに対して多様な対策が採用されてきました。現場の医療提供者の尽力や国民ひとりひとりの行動変容をはじめとして、産官学民による協力が行われてきました。因果関係の究明が今後求められるものの、2021年1月時点において、先進工業国のなかでは、死者数や人口当たり死亡率は比較的低く抑えられてきました。
一方で、医療提供体制のひっ迫、公衆衛生政策と経済政策の両立における課題、国民の行動変容や社会活動抑制の限界などを踏まえ、現状のCOVID-19対策に満足することなく、さらなる政策の進展にも期待が寄せられています。アジア・オセアニア諸国、特にシンガポールにおいては、日本よりも感染者数、死亡率を低く抑えることに成功している事例も多く、事例や教訓の共有が、今後の対策の推進に寄与すると考えられます。
そこで日本医療政策機構では、このような社会的要請のもと、中立的で独立したグローバルなシンクタンクの立ち位置を活かし、諸外国の専門家とともに、今後のCOVID-19対策を検討すべく「COVID-19政策アジェンダシリーズ」と題して、連続的にグローバル専門家会合を開催します。
専門家会合では、諸外国におけるサーベイランスシステムの現状、検査体制の状況や拡充政策、2021年の東京オリンピックやその他国際イベントを開催するにあたって求められる国際検疫体制や検査体制のあり方、政府から国民に対するリスクコミュニケーションのあり方、疫学的データベースシステムのあり方などについて、国内外の有識者が、フラットに立場を超えて意見交換を重ねる場を構築していきます。今後、シンガポール以外の諸外国からも有識者をオンラインでつなぎ、諸外国との意見交換の場にも発展させていく予定です。
第一弾の専門家会合では、開催についての国民的な合意形成や、国際連携体制の構築が喫緊の課題となる東京オリンピックを念頭として、国際大規模イベント再開に必要となる政策的進展について議論を深めます。
■お申込:
ZOOMウェビナー登録はこちら
https://zoom.us/webinar/register/WN_hOV18F8uSMWr7gZPXqVmAg
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■開催概要
日時: 2021年3月5日(金)15:00-17:30
会場: 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ グローバルビジネスハブ東京
形式: ZOOMウェビナー
主催: 特定非営利活動法人 日本医療政策機構(HGPI)
使用言語: 日本語および英語(同時通訳有り)
お申込方法:下記URLよりお申込みください
ZOOMウェビナー登録
https://zoom.us/webinar/register/WN_hOV18F8uSMWr7gZPXqVmAg
■プログラム(案):(順不同・敬称略)
15:00-15:05 開会の辞
- 黒川 清(日本医療政策機構 代表理事)
15:05-15:10 開催趣旨説明
- 乗竹 亮治(日本医療政策機構 理事・事務局長/CEO)
15:15-15:25 基調講演(1)日本におけるCOVID-19対策と国際連携への期待
- 自見 はなこ(参議院議員)
15:30-15:40 基調講演(2)シンガポールにおけるCOVID-19対策と国際連携への期待
- Cheong Wei Yang(シンガポール保健省 特命副長官)
15:50-17:10 ラウンドテーブルディスカッション
パネリスト:
- 栁原 克紀(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 病態解析・診断学分野 教授/東京iCDC専門家ボード検査・診断チーム)
- 岡部 信彦(川崎市 健康安全研究所 所長)
- 桜井 なおみ(がんサバイバー/キャンサー・ソリューションズ株式会社 代表取締役社長)
- 釜萢 敏(日本医師会 常任理事)
- 中村 英正(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会ゲームズ・デリバリー・オフィサー(GDO))
- Alex Richard Cook(Associate Professor, at National University of Singapore, Saw Swee Hock School of Public Health)
ラウンドテーブルモデレーター:
- 乗竹 亮治(日本医療政策機構 理事・事務局長/CEO)
17:10-17:20 とりまとめセッション・総括コメント
- 舘田 一博(東邦大学 医学部微生物・感染症学 教授 / 日本感染症学会 理事長)
17:20-17:30 閉会の辞
- 武見 敬三(参議院議員/自由民主党 新型コロナウイルス感染症対策本部・社会保障制度調査会 新型コロナウイルスに関するワクチン対策PT 座長代理)