日本医療政策機構（HGPI: Health and Global Policy Institute）は、2025年6月23日から27日まで日本を訪問中のインド工業連盟（CII: Confederation of Indian Industry）の医療・医療技術分野のリーダーシップ代表団を迎え、東アジア・アセアン経済研究センター（ERIA: Economic Research Institute for ASEAN and East Asia）および日本国際交流センター（JCIE: Japan Center for International Exchange）とともに、意見交換会を開催しました。本会合は、4団体が互いの活動を理解し、将来的な連携の可能性を探ることを目的として行われました。

CIIの代表団は、CEO、取締役、大学教授、医師、起業家などで構成されており、日本の健康的な高齢化への取り組みや、医療サービスにおける新技術の活用について強い関心を寄せていました。意見交換会にて、彼らは、インドにおける高齢化の現状と直面する課題を紹介し、今後日本の高齢化の取り組みから学ぶことへの期待を示しました。紹介された主な課題には、高齢化に関する医療政策の未整備、インフラストラクチャーの未整備、安全でアクセス可能な医療関連施設の不足、高齢者ケア支援の不足、介護人材のスキル不足などが含まれます。彼らの目標は、世代を超えた長寿社会を支える基盤と、高齢者医療に関する意識の向上とデジタルリテラシーの強化を目的とした、誰もが利用できる共通のプラットフォームを構築することです。

インドにおける健康長寿の課題に対応するため、CIIは、医療システムのデジタル化を通じて、デジタルヘルスのインフラを整備し、質の高い医療、特に通常であれば医療へのアクセスが難しい人々にも届く医療の提供を目指しています。高度な技術で知られる日本から、医療におけるテクノロジーの効果的な導入方法を学び、インドの人々にとってアクセス可能な医療を実現したいと考えています。

JCIEの代表者は、自団体の活動概要を簡潔に紹介しました。その活動には、グローバルヘルスや人間の安全保障、すべての人に対する医療の公平性とアクセスの推進に加え、高齢化に伴う課題への対応として、好事例の調査およびその知見を共有するためのプラットフォームの構築が含まれます。

HGPI副事務局長の菅原丈二は、HGPIの概要と、認知症プロジェクトをはじめとする健康長寿に関する取り組みを簡潔に紹介しました。菅原は、日本の強みは医療を安定的かつ一貫して維持してきた点にあり、それが日本の健康長寿に貢献していると述べました。一方で、その強みは医療のデジタル化による制度改革を進める上では障壁となる可能性もあると指摘しました。

今回の交流会は、有益かつ示唆に富んだものであり、文化や分野を超えた知見の共有の機会となりました。HGPIは、今後もこのような学際的かつ多様な関係者による知識共有の機会を継続的に創出していくことを目指します。

■東アジア・アセアン経済研究センター（ERIA: Economic Research Institute for ASEAN and East Asia）

ERIAは、2008年にインドネシア・ジャカルタに設立された国際機関で、東アジア16か国の首脳による正式な合意に基づいて設立されました。主な役割は、ASEAN経済共同体（AEC: ASEAN Economic Community）の構築を促進し、より広範な地域共同体の形成を支援するための研究および政策分析を行うことです。活動分野は、貿易・投資、エネルギー安全保障、気候変動、環境、デジタル経済、イノベーション、起業、食料安全保障、医療など、多岐にわたります。

■インド工業連盟（CII: Confederation of Indian Industry）

CIIは、130年以上にわたりインドの発展において重要な役割を果たしてきた、非政府・非営利の組織です。産業界主導・運営のもと、民間・公共の両セクターから約9,700の直接会員を有し、業界団体を通じて間接的に36万5千以上の企業を代表しています。CIIは、政府、市民社会、有識者と緊密に連携し、政策への働きかけ、競争力の強化、ビジネス機会の創出に取り組んでいます。また、合意形成やネットワーキングの場としても機能し、協議や助言を通じて国家の発展に貢献しています。

■日本国際交流センター（JCIE: Japan Center for International Exchange）

JCIEは1970年に設立された、東京を拠点とする非営利・非政党の外交政策研究機関です。ニューヨークに拠点を置く米国のカウンターパート「JCIE USA」と緊密に連携し、日本の国際関係の強化、グローバルな課題への対応、より包摂的な社会の実現を目指しています。JCIEは、外交、グローバルヘルス、人間の安全保障、ジェンダー、多様性、市民社会など幅広いテーマを対象に、官民連携による政策対話、調査研究、議員交流プログラムなどを実施しています。