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(開催報告)第58回定例朝食会「HTAの基礎と最新の動向―くすりの費用対効果とは―」五十嵐中氏(2016年6月2日)

開催日2016-06-02

(開催報告)第58回定例朝食会「HTAの基礎と最新の動向―くすりの費用対効果とは―」五十嵐中氏(2016年6月2日)

今回の朝食会では日本の数少ないHTA(Health Technology Assessment:医療技術評価)のエキスパートである五十嵐氏に、そもそもHTAとは何か、医療の価値をどのように測るのか、HTAの結果が政策へどう反映されるのか、といった点について、最新の事例を交えて、わかりやすく解説していただきました。

■スピーカー:五十嵐中氏(東京大学大学院薬学系研究科医薬政策学 特任准教授)


■日時:2016年6月2日(木)8:00‐9:15 
■場所:EGG JAPAN (新丸の内ビル10階)



~講演内容要旨~(敬称略)

■HTAって?

広義には、医療技術の開発・普及・使用に伴う、医学的・社会的・経済的な影響について研究を行う、学際的な政策分析領域を指している。
一方、本朝食会でも扱う狭義のHTAは、費用対効果評価をもとにして薬の給付の判断や価格設定を行うことで、効率的な医療の実現を目指す研究領域を指している。
HTA、Health Technology Assessmentという言葉には、どこにもCostやEconomicsという言葉が入っていないのが大事な点だ。HTAは、コストや経済性だけを見る手法ではない。


■800円の鮭弁当と1200円の焼肉弁当の比較

HTAでは、必ず「効果」についての検証が行われる。「治療薬自体の費用」と「薬を導入しなかった場合にかかる将来の治療費」を比べた場合、今の時代はおそらく前者のほうがコストを抑えられる。しかしこれらを比較するのは、単なる費用比較であって、正確な比較ではない。「効果」の検証には、「健康上のメリット」(救命率、罹患減少、生命予後の改善など)を含める必要がある。
さらに、一人あたりの救命率を計算するのではなく、費用が増えた分を効果が増えた分で割り算するのが正しい計算方法で、これを増分費用効果比(ICER:incremental cost-effectiveness ratio)という。これらがすべての基本となる。

単純な例で、鮭弁当(800円)と焼肉弁当(1200円)の比較をしてみてほしい。費用だけなら800円の鮭弁当を選ぶだろう。しかし、両者は中身が違う。鮭弁当に400円を加えて、焼肉弁当を食べることによって得られる効果(満足度、エネルギー摂取など)を見ることではじめて正しい比較ができるようになる。


■生存年(LY)に質の「スパイス」を加えた質調整生存年(QALY)

ではその「効果」はどのように測定するのか。まずは、基準としている治療や投薬によって、「生存年数を1年延長するのにどのくらい費用がかかるのか」測定する。ただしその年数も単なる生存年(LY: Life Year)ではなく、生活の質も反映したQOLスコアで点数付けを加えた、「質調整生存年」(QALY:Quality adjusted Life Years)という指標を用いる。いわば質という「スパイス」を加えることにより、単なる生存年数ではなく、生活の質も反映した指標を用いた比較検討が可能となる。

■世界各国のHTA事情

各国によってそのシステムや活用方法は異なる。たとえば、英・豪は保険でカバーするかどうかの判断材料に使われている。また仏は、高めの給付価格を希望する薬剤について経済評価の添付を求めている。さらに独では、価格設定の交渉が難航した際の評価材料と位置づけているが、現時点では経済評価を実施した適用例はない。このように各国でHTAの活用法や現状は大きく異なっている。



■Q&Aセッション

Q1:運動療法や健康食品などの予防分野においても比較することは可能か?
A1:きちんとしたデータがあればもちろん可能になる。自分自身が最初に取り組んだのも「禁煙外来」の評価だった。健康食品については近年データが出てきているが、まだまだ弱い。

Q2:国内のHTA専門家が不足しているといわれているが?    
A2:実際のところそう多くはない。それでもここ数年授業をする中で、関心を持っている学生が増えてきているのは強く実感している。このまま増えていくことを期待している。

Q3:前述の4か国の実施機関の人員や予算等の規模はどのくらいなのか?
A3:各国機関は、いずれも医療経済評価だけをやっている訳ではない。仏では日本でいうところの医療機能評価機構のような業務も行っている。英のNICEは診療ガイドライン全体のとりまとめも行っている。各国とも経済評価を専門にやっている人は20~30人程度ではないか。組織そのものの規模は大きいが、医療技術評価部分だけでいえば数億円単位の予算にとどまっている。その分、外部専門家との連携が活発だ。一方日本は、そもそも専門家の数が足りないのが課題だ。

 
 

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