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(開催報告)第33回特別朝食会「国民皆保険は維持できるのか?―医療改革の展望―」 武見敬三氏(2016年9月23日)

開催日2016-09-02

(開催報告)第33回特別朝食会「国民皆保険は維持できるのか?―医療改革の展望―」 武見敬三氏(2016年9月23日)

参議院議員武見敬三氏をゲストに迎え、都内で当機構関係者を招いた特別朝食会を開催しました。



■アジアにおける人口の高齢化
アジアにおける人口高齢化は世界的な課題となっている。今年4月にUNDP(国連開発計画)は、アジア人間開発報告書において、人間開発という視点で高齢化にいかに対処するかについて言及している。翌年5月には世界銀行が、特に労働力の生産性といった視点から分析している。

アジアの中で、高齢化について、年齢層ごとの分布図を確認すると、おおよそ1990年代の中ごろに14歳以下の若年人口がピークを迎え、その後微減を続けている。また、生産労働人口(15〜64歳)についても同様に2045年を境に微減を続けることが予想される。それに対して65歳以上人口は、今後確実に増えていくことが明らかとなっている。

人口の高齢化にともない、従属人口指数 も変化している。こうした従属人口指数の変化に伴い、日本は1960年から2000年の40年間で、国民皆保険の達成や介護保険制度を整えることに成功した。他のアジア諸国も含めると2016年が従属人口指数のピークであり、従属年齢人口が増加する。

■高齢化のスピードと疾病構造の変化
ヨーロッパ諸国と比較すると、アジア諸国は極めて短いスパンで高齢化が進行する。
1940年頃にヨーロッパから最初の波が始まり、その後日本は極めて短期間に高齢化が進んだ。以降2016年~2026年にかけて韓国、台湾、中国等が高齢化率7〜14%になり、その後、ベトナムやインドネシア、ミャンマーといった国々が5%〜7%の高齢化率で続いていく。

アジア諸国の高齢化は急速に進み、2040年頃には世界の65歳以上人口の70%以上をアジアが占めるようになる。こうした状況下において、高齢化に多い疾病であるガン、虚血性心疾患、脳卒中で亡くなる方が増加し、疾病構造の変化は避けられない。このような疾病構造の変化に伴い、地域全体でどのような保険サービスの在り方が適切かを検討する必要がある。

■高齢化社会における持続可能なシステム
高齢化社会を意識しながらも、At all ages(全ての年代)に通用する目標を立てる必要がある。ヘルスケアと関連する分野も含めて横断的に考えるユニバーサルヘルスカバレッジが改めて目標を設定において必要とされる概念である。個人の負担能力を超えることなく、非感染症に関わる治療を継続的に安定的に行うことができるシステム、が高齢化の進むアジアでは必要とされている。

高齢者へのサービス提供を検討する時に、どこでどういう生活しているかを見る1つのバロメーターが、高齢者の独居指数である。日本においては単身及び夫婦のみの高齢者世帯が50%程度であるのに対し、ドイツはもはや90%、アメリカでも70%を超えている。また、アジアにおいては、中国が40%、ベトナムは30%弱、インドネシアは25%程度という現状で分布しているものの、タイやインドはまだまだ低い。しかしながら産業化・都市化が進むに連れて、地方から都市への人口移動も増える。アジア諸国でも今後、単身及び夫婦のみの高齢者世帯の増加が予想され、どのように対処するべきか、考えなければならない。

日本は今から60年前は、自宅で亡くなる方の割合が82.5%以上だったのに対して、2009年には12.4%に急減している。多くの高齢者が病院や介護施設で亡くなる時代を迎えている。1990年から特別養護老人ホームのような介護施設が着実に増えていき、2000年に介護保険制度ができると介護施設の数はさらに増加し、2011年時点では6000を超えている。

介護施設などの箱モノを充実させる事は、経費がかかる上、高齢者にとって必ずしも良いことではない。これらの施設は、医療保険・介護保険の財政を圧迫する原因であり、それによって持続可能性が大きく損なわれる。アジア諸国をサポートする際の課題は、単身及び夫婦のみ世帯が維持できるシステムを形成し、施設整備に注力する前に、在宅医療を拡充させることが重要である。

■平均寿命と健康寿命
平均寿命と健康寿命の格差は、女では12歳、男では9歳。近年日本ではこの格差は縮まったものの、広がってしまうと高齢者人口の中で医療と介護を必要とする人が増え、若年層の負担が増えることになる。高齢化による社会のダイナミズムを喪失させる最大の原因が、健康寿命と平均寿命の格差である。
今後の政策において、ただ単に平均寿命を延ばすような政策は考えられない。
健康寿命をいかに伸ばし、平均寿命との格差をいかに解消するかが最大のテーマであり、それはアジアにおいても同様である。


■アジアにおける介護労働者サイクルの構築の提案
保健人材の問題に着目すると、日本の場合2025年には38万人介護労働者の不足が予測される。同様に、アジア諸国における高齢化も確実に進んでおり、それは高所得国のみならず、中低所得国でも同様の状況が生じている。

日本では、アジア諸国に対して介護事業を展開している企業、医療法人、社会福祉法人が50程あるが、彼らは日本式をそのままもっていくだけでは効果はなく、現地の生活習慣、宗教になじむ形で再加工することが必要であると強く実感している。介護労働者に対して、介護技術の基礎知識を定着させるための基礎的な教育が必要である。同時に、学んだ知識を現場で活かす経験ができるような機会を提供することが重要である。

アジア地域における介護の人材育成という観点を鑑みると、介護労働者の不足している日本と相互補完関係にあることがわかる。2030年、日本の高齢者がピークを迎え、高齢者人口が減り始めるまでの期間において、日本は急激に増えるサービスに対応するために外国人労働者を導入する必要性が見込まれているからである。

しかしながら、外国人労働者をそのまま受け入れ続けると2030年以降は国内で労働市場が供給過多になってしまう。そこで高齢化に対応する人材をアジアで国境を越えてサイクルにする事で、日本とアジアの両方の課題を解決するための制度を、政府間で協定を結びながら作ることができないだろうかと考えている。

■アジア健康構想
介護労働者サイクルを実行するためのイニシアチブとしてアジア健康構想を考えている。経済的にも社会的にも活力ある健康長寿社会をアジア諸国に作るのを目的としている。アジア地域で増え続ける高齢者人口に対応するため、健康的な生活を維持するための支援をいかにして講ずることができるかを検討する。

アジア諸国の高齢化の課題を解決するためには、健康寿命の延伸を測ることが必要不可欠である。そして、健康需要を控除できる高齢者が、例えば雇用機会に恵まれて、雇用されることによって一定の所得を確保することができる。これにより若年層からの支援に依存せず、自立する期間をより長期間つくり、社会とのネットワークを保ち続けることができる。これは健康面でも経済面でも有効な手段と考える。

高齢化の波は、中低所得国にも広がっていく。これらの国々が高齢化に直面するまでに、高齢化に対応する制度設計をし、サービスを提供する事業者を育成することができるかが重要である。事業者が必要とする介護機器や医療機器を国内で調達できる仕組みを作り、サービスを提供できるシステム全体を短期間で作らなければならない。
日本としては、彼らが利益を享受でき、継続的に各国を支援する仕組みを考えていかなければならない。

■これからの姿
各国の人口問題はこれまで国単位で考えられてきた。高齢化先進国の状況を見て入れば、どのような状況が生じるかは分かるものの、それだけでは解決できない。問題に直面するまでに産業を育成しようとしても、一国だけでは間に合わないことは明白であり、近隣諸国との連携が必要となる。先行している国々と上手く連携体制することが、これからの時代では求められている。

日本は、これまで医療・介護に関わる必要な産業を育成し、サービスの提供ができるシステムを形成してきている。しかしそれはあくまでも国内にのみ通用するシステムであり、アジア諸国に通用するものに変えていかなくてはならない。
アジア地域のダイナミズムを失うことなく、各国が協力し合って解決していく仕組みを構築することが、これからの新しい保健医療外交のテーマである。

 
 

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