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(開催報告)第53回定例朝食会「『医療の質』を測る-Quality Indicator」

開催日2015-05-20

(開催報告)第53回定例朝食会「『医療の質』を測る-Quality Indicator」

■テーマ:「『医療の質』を測る-Quality Indicator」
■スピーカー: 聖路加国際病院院長 福井次矢先生
■日時: 2015年5月20日
■場所: 神戸屋シルフィー グランアージュ丸の内店


2007年に聖路加国際病院でスタートしたQuality Indicator(QI)は、昨年11月のOECDレポート「医療の質のレビュー 日本」などを通じ国際的にも関心が高まっています。2007年から、その取り組みをリードしてきた福井先生にその最新動向についてお話を伺いました。
 
〜講演の内容要旨〜

QIを用いた医療の質の改善 ~聖路加国際病院の取り組み


■聖路加加国際病院で使用している指標の一例
たとえば、降圧剤による血圧コントロールでは、患者の血圧値が目標値まで下がっている割合を、病院全体と担当医の両方の値を測定して改善につなげている。高血圧患者の数は多く、専門医以外でも診なくてはならない。測定結果は各医師に直接フィードバックし、さらに勉強会も開催。改善されない患者については、電子カルテにアラートが出るようにしている。

糖尿病患者のHbA1c の数値も、同様に、測定結果を担当医師にフィードバック。医師がどの薬を処方しているかも電子カルテのデータで全てチェックでき、専門医へのコンサルテーションや勉強会を通じ適正処方につなげている。

中心静脈カテーテル挿入術の合併症発生率もQIにより大きく改善した。外部講師を招き、スタッフ対象の実技指導を実施したり、認定制度を作ったりするなどして、合併症件数を大きく減らすことができた。

院内感染防止につながる、手指衛生も徹底して改善してきた。当初は担当者による直接観察からはじめ、その後ハンディーカムカメラでのモニターに、さらに最終的には24時間観察できる定点カメラを病棟の各所に設置。それに基づいて手指衛生をやっていない人にフィードバック、行わない理由を尋ねてディスカッションするなどして改善を重ねてきた。手指衛生実施率の改善に伴い、感染症の発生率も減少した。

■QIによるベンチマーキングとPDCAサイクル
聖路加に来た全ての患者が、質の高い医療が受けられるようにする-これが院長の仕事である。QIを院内のスタッフが見られるように本にまとめた。きちんと公開することで、ほとんどの数値が改善した。いわゆる「ホーソン効果(Hawthorne Effect)」で、誰かに見られていることによるパフォーマンスの向上効果と、他の医師、病院のQIも知ることで、負けたくないというモーチベーションにつながる。また医療の現場に「PDCAサイクル」をまわすことも重要で、効果的だ。

■全国への拡がり
QIは拡がりつつある。たとえば、日本病院会の「QIプロジェクト」は大きく進んでいる一例だ。2010年の開始当初は30病院だったが、毎年参加病院は増え、現在では326病院が参加。そのデータは主として聖路加国際病院で分析し、参加病院間のベンチマーキングを行い、各病院へフィードバックしている。事例発表会も開催されており、良い事例の経験が横に拡がるようになっている。

■QIが世界へ
海外では医療の質の指標を報酬に連動させる動きも起きている。良く知られた米国のPay for Performanceのほか、英国もインセンティブをかけている。フランス、オランダでは、報酬とは連動していないが、監査中病院ランキング等でQIを活用している。

QIの公表は万能ではない。たとえば、数値が悪い病院はもともと救急患者が多いといった、背景やリスクを調整して考える必要があり、医療の質だけを抜き出して単純に比較するのは簡単ではない。それぞれの病院、医師により、患者の特性が異なるからだ。QIは出来る病院が導入し、院内の改善策や行動変容のために活用するのが基本だ。

昨年3月のOECDの発表によれば、日本は加盟国中12位。また、昨年11月のOECD報告書*では、「聖路加国際病院で行われているQIプロジェクトは非常にインプレッシブで、全国展開のモデルになるだろう」と評価された。今後も世界にも貢献していきたい。

* OECD Reviews of Health Care Quality JAPAN 5 November 2014
(邦題:「OECD医療の質レビュー 日本」)

 
 

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